King's Gambit


キングズ ギャンビット、古くから存在するオープニングの1つ。

大別すると 2...exf4 とする King's Gambit Accepted と 2...exf4 としない King's Gambit Declined に分けられる。

今日、マスターレベルで使われることは稀であるが、クラブプレイヤーの間ではよく使われている。



1.e4 e5 2.f4

白はキングサイドの f ポーンを差し出し 2...exf4 となれば後に d4 としてセンターで優位を得ようとするねらいがある。...exf4 または fxe5 で 白はキャスリング後、ルークを f ファイルで活用させることができる。

2...exf4 の後、白が黒の f4 ポーンを取ることができれば、白はキングサイドでスペースの利を得る。黒が g5 として f4 ポーンを守ろうとすれば、白はたいてい h4 として 黒の g4 を促し、黒のキングサイドを弱めることができる。


黒2手目は主に3つ
2...exf4 King's Gambit Accepted
2...d5 Falkbeer Countergambit
2...Bc5 Classical Defence

2...Qh4+ は時期尚早で 3.g3 で白は問題なく、黒はクイーンを再度動かすことになる。

2...d6 は消極的な手で、白が 3.fxe5?? とすれば 3...Qh4+ で黒が有利となるので、黒は 2...d6 で e5 ポーンを守る必要はない。ただし 1.e4 e5 2.f4 d6 3.Nf3 になると 3...exf4 で 1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 d6 の Fischer Defence に transpose するので白は知っておきたい。


ここでは King's Gambit 対策として好まれる 2...Bc5 の解説にするが、2...exf4 に少し触れておこう。

2...exf4 の後、白は 3.Nf3とすることが多いが、3.Bc4 も有効で
3.Nf3 King's Knight Gambit
3.Bc4 Bishop's Gambit と呼ばれる。

Bishop's Gambit は1.e4 e5 2.Bc4 の Bishop's Opening と関連性はあるが別物。

3.Nf3 と 3.Bc4 それぞれに多くの変化が存在する。



2...Bc5

Classical Defence 。通常のピース展開で白が d4 とするのを妨げる。白は Bc5 の利きを何とかしなければキャスリングできない。




3.Nf3

メインライン。黒の ...Qh4+ を防ぎ e5 ポーンに攻撃を加える。

3.Nc3 も可能 3.Nf3 d5 を避けられる。

3.fxe5?? Qh4+ 4.g3 Qxe4+ で 白はルークを失うか 4.Ke2?? Qxe4 でメイト。




3...d6

...Qh4+ ができなくなったため、白が 4.fxe5 とした時 dxe5 とできるように e5 ポーンを守る。

3...d6 4.fxe5?! dxe5 となった時 5.Nxe5?? とすると 5...Qh4+ で黒優勢になる。4.fxe5?! は 4...dxe5 で黒クイーンの利きが開き、Bc5 が d6, e7 へ後退できるようになり黒好形。

3...d5 4.Nxe5 dxe4 5.Qh5

3...Nc6? は 4.fxe5 で白は問題ない。



ここで白は主に2つの選択肢がある。

4.c3 とした後 d4 として強固なポーンセンターを築くこと。しかしピース展開で遅れを取る面がある。

4.Nc3 キャスリングのことは心配せず、クイーンサイドのナイトを展開させ活用する方法。



4.Nc3

e4 ポーンを守り、センターの d5 を支配。後で Na4 として Bc5 を攻めるねらいもある。




4...Nf6

キャスリングの準備となる自然なピース展開。

4...Nc6 黒は Bc1 の展開を見てから Nb8 の展開を考えることの方が多い。
4...Nc6 5.Bb5

4...a6 5.Bc4 または 5.fxe5

4...Bg4 5.Na4 または 5.h3




5.Bc4

Be2 のような消極的な手を指すより、a2-g8 斜線上で活用させる。d3 とする前に展開させておく。




5...Nc6

キャスリングも可能だが急ぐ必要はないので、Nb8 をセンターの攻防に参加させる。

5...Ng4? 6.d4

5...c6 6.d3 または 6.fxe5

5...Be6 6.Qe2 または 6.Bxe6




6.d3

e4 ポーンを守ることで Na4 が可能となる。Bc1 の利きが開かれる。

6...Na5 でビショップとナイトの交換になるが 7.Bb3 Nxb3 8.axb3 a6 9.Qe2 で白は悪くない。



6...Bg4

白は Be2 とできないので Nf3 をピンされることはプレッシャーになるが、7.Na4 で Bc5 を攻めるか、7.h3 ですぐに Bg4 を攻めることができる。

6...a6 は Na4 とされたとき Bh7 とするため。
6...a6 7.f5

6...Ng4 7.Qe2 または 7.Ng5

6...0-0?! 7.f5! しかし 6...Bg4 7.f5?! では 7...Nh5! で黒が良い。

6...Be6 7.Bb5!?

この辺は黒の指手により白の対応が様々なため、全てを覚えるというよりはどんな対応になるか確認し、ゲームで起こった場合に次はその手を指せるようにしたら良いだろう。




7.Na4

白のキャスリングを妨げている Bc5 を攻める。黒は Bc5 の交換を避けることはできないが、7...Bb6 または 7...0-0 の選択ができる。

7.h3 Bxf3 8.Qxf3 Nd4 9.Qg3




7...0-0

8.Nxc5 dxc5 で 黒は d ファイルが開かれ、d4 の支配が強まり、場合によっては Bc4 を取り除くこともできるのでキャスリングを済ましておく。

7...Bb6 の場合、8.Nxb6 となることが多いが、急いで Bb6 を取る必要もなく 8.c3 も有効。




8.Nxc5

キャスリングを妨げている Bc5 とナイトを交換する。白は two bishops を保ち、ポーンストラクチャーも良く、キングサイドの攻めをねらう。




8...dxc5 

取るしかない。形勢はほぼ互角。




9.0-0

黒はキャスリング済みでマイナーピースも全て展開しているため、キングの安全性を考えここでキャスリング。ただし Nf3 が Bg4 にピンされているので、キャスリング後、...Nd4 となったらどうするか考える必要はある。




9...Qd6

ルークが連結され活用しやすくなる。e5 ポーンに利きが及ぶので fxe5 とされても ...Nxe5 とポーンを取り返すことができる。ただし、10.fxe5 Nxe5 11.Bf4 となったらどうするか気づいておきたい。

9...Nh5 10.h3 Bxf3 11.Qxf3

9...Nd4? 10.fxe5 Nd7 11.Bf4




10.h3

Nf3 をピンしている Bg4 を攻める。

10.fxe5 Nxe5 11.Bf4 Bxf3

10.f5 Nd4 11.a4 a6!




10...Bxf3

ビショップを引いて温存するよりも、d4, e5 を支配しているナイトを消す。




11.Qxf3

クイーンで取るのが適切。

11.Rxf3?! Nxe4 で白はポーン1つ損する( 12.dxe4?? とすればクイーンを失う )。

11...b5 12.Bb3 c4 13.dxc4 bxc4 14.Ba4 などと続く。



参考文献

Beating the Open Games - Mihail Marin
The Fascinating King's Gambit - Thomas Johansson
WINNING WITH THE KING'S GAMBIT - Joe Gallagher
 King's Gambit - Wikipedia

コメント

Walrus さんの投稿…
ついにKing's Gambitの解説がきましたね^^
 KGは黒番だと一番苦手な定跡かもしれません。勝率も著しく低くなります。以前は、2...Bc5にしようと思ったのですが、最近acceptedもしようと決めました。 苦手であることには変わりはないのですが、こういうシャープなオープニングはディフェンスの練習にもなるかもしれない、と思ってのことです。
hitsujyun さんの投稿…
Walrus さんもブログのほうで King's Gambit の記事を書かれてましたね。

私はギャンビット好きで、中でも King's Gambit は頻繁に使います。始めは 1.e4 e5 2.f4 3.Nf3 を使っていましたが、今は 3.Bc4 を使ってます( 3.Nf3 とすることもあります )。黒番では 1.e4 e5 2.f4 exf4 3.Nf3 に対しては 3...d5 の Modern Defence を使ってます。

白番では 2...exf4 とされるよりも 2...Bc5 とされるのが私は苦手です。

白番で King's Gambit を使わない人でも、黒番で 1.e4 e5 と指す人は King's Gambit の対策をひとつは持っていた方がいいと思います。

確かにシャープな展開になりやすいのでディフェンスの練習になりますね。