Scotch Game


スカッチゲームの名は、1824~1828年に London と Edinburgh( Scotlandの首都 )のチェスクラブ間で行われた通信チェス対戦で、Edinburgh の選手が使ったことに因んでいる。
元世界チャンピオンの Garry Kasparov が Scotch Game で数々の成功を収めてから人気が高まった。
Ruy Lopez ほど変化は多くないため学びやすい一方、黒が対応を取りやすいとも言える。



1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4

黒に exd4 とさせる意図がある。d ファイルが half-open file になればスペースを得られる。c1 ビショップが展開できるようになり、白はピース展開が容易となる。




3...exd4

e5 ポーンを他の駒で守るより良い。

3...d6 は 4.dxe5 Nxe5 5.Nxe5 dxe5 6.Qxd8 Kxd8 で黒はキャスリングできなくなる。
3...d6 4.dxe5 dxe5 5.Qxd8 Kxd8 も黒はキャスリングできなくなる。
3...d6 4.dxe5 dxe5 5.Qxd8 Nxd8 6.Nxe5 は黒がポーン1つ損。
3...d6 4.Bb5 exd4 5.Nxd4 Bd7 は Ruy Lopez Steinitz Defence に transpose する。

3...Nxd4 4.Nxd4 exd4 5.Qxd4 は 白有利とされる。

3...f6 初心者のころにやってしまうかもしれないが、白であれば f2、黒であれば f7 のポーンを早期の段階で動かすと、斜めからクイーンの攻撃など、キングが攻撃を受けやすくなり、不利となることが多い。
3...f6 4.d5 で白有利




4.Nxd4

メインライン。ポーンを取り返し d ファイルが望み通り half-open file となったため、わずかながらスペースの利を得る。

オープニングで同じ駒を何度も動かすことはピース展開の遅れにつながるが、目的があり、安全を損なわなければ問題ない。

その他の主な変化
4.Bc4 Scotch Gambit
4.c3 Göring Gambit




4...Nf6

キングサイドのナイトを展開させるとともに e4 ポーンを攻撃している。白はどのように e4 ポーンを守るか問われる。

白の5手目は 5.Nc3 5.Nxc6 が主であるが、すでに 黒の e5 ポーンはないため、4...Nf6 とする場合は 5.e5 となったらどう対応するか、考えた上で指すべきである。

相手が使ってくることは少なくとも、相手がこの手を指してきたら、どのように応じれば良いか、疑問を感じたら、まず自分で考え、その後、調べて、適切な対応が分かるようにする。本に載ってない手順の場合は、チェスエンジンの示す手順が参考になる。その場合でも指手の意味を理解して覚える。

4...Nxd4 とするのは 5.Qxd4 で白クイーンがセンターの好位置を占めるのを手助けするようなもので、黒は避けるべき。5...c5 としても有効ではない( d5 のマスを弱くするなど )。

その他の主な変化
4...Bc5 Classical Variation
4...Qh4 Steinitz Variation


白の5手目は主に2つ
5.Nc3 Scotch Four Knights
5.Nxc6 Mieses Variation

5.e5 5.Qd3 5.f3 5.Bg5 は劣るが黒としてはどう対応すれば良いか、調べるのも勉強になるだろう。




5.Nxc6

黒クイーンサイドの pawn structure(ポーン構造)を崩ずし、5...bxc6 の後 6.e5 とする目的。白はビショップとクイーンの利きが良い。




5...bxc6

b ポーンで取るのが正しい。c6 ポーンの利きが d5 のマスに及んでいることにも注目。

5...dxc6? 6.Qxd8+ Kxd8 7.Bd3 となれば、黒はキャスリングできなくなった上に、白よりも pawn structure が悪い。キングサイドのポーンは 白4 黒3で、仮にピースが全て無くなり、pawn ending となれば、キングサイドのポーン数で勝っている白が優勢。クイーンサイドのポーンは 白3 黒4だが、黒はダブルポーンになっているため不利。




6.e5

スペースを得るとともに、黒が d5 とする前に Nf6 を攻める( Ne7, Ng4 とできない )。4...Nf6 をとがめる手。

6.Bd3
有効であるが、黒に問題をもたらしてない。

6.Nc3 Bb4 は Scotch Four Knights に transpose する。
6.Nc3 d5!?

6.Nd2 と 6.Qd4 は劣る。




6...Qe7

ピンを生かして、Nf6 を取られないようにするだけでなく、白に e5 ポーンを守らせるよう強いる。この手を知らなければ、Nf6 を動かしてしまうだろう( 6...Qe7 がベスト )。





7.Qe2

e5 ポーンを守り、Nf6 を取ることができるようになる。

7.f4 d6
7.Bf4 Nd5!
いずれも黒有利。




7...Nd5

放っておけばナイトを取られてしまうので、1番良いところへ移動させる。
7...Ng8 は劣る。




8.c4

センターにあるピースは良い働きをするため、白は Nd5 を追いやる。


黒8手目は主に2つ
8...Ba6
8...Nb6 




8...Ba6

ビショップで c4 ポーンをピンすることで Nd5 を取られないようにする。白は cxd5 とすればクイーンを失う。黒はクイーンサイド へ キャスリング可能となる。

" Develop with threats "
「ねらいを持って駒を展開させること」




9.b3

c4 ポーンを守るだけでなく、Bc1 が b2 または a3 に展開できるようになる。

9.Nd2 と 9.g3 の変化もある。





さてここで、黒の9手目として考えられる手を書き出してほしい。こんな手は無効だろうと思う手は書き出さなくてもよいし、そのまま書き残してもいい。何故、無効なのか自分で分かればなおさらよい。



私が思いついた手
9...0-0-0
9...d6
9...Nb6

一手ごと指手の意味を理解するだけでなく、1手ごとにどんな指手が可能か、自分で考え出すことは、時間はかかっても、考える力が養われる。

また、どの手が有効で、どの手が悪いのか、何故悪いのか、本やチェスエンジンを使って調べるといいだろう。


定跡はどうなっているかというと

黒の主な変化は4つ
9...Qh4
9...0-0-0
9...g5
9...g6





9...g6

キングサイドを弱くすることなく、...Bg7 から e5 ポーンにさらなるプレッシャーをかけようとする。Qe7 が Bf8 の展開を妨げているため、...Bg7 へ展開させようとする。




10.f4

e5 ポーンを守ることで Qe2 を動かしやすくなる。Qe2 が動けば cxd5 が可能となる。

e1-h4 ラインが開かれたため、10...Qh4 でチェックがかかる。10...Qh4 としても 11.g3 で守ることができるため、10...Qh4 は有効でないが、10.f4 と指す前に 10...Qh4 ときたらどうなるか、ということは常に考えておかねばならない。

10...Qb4+ 11.Bd2 Qb6 12.Qf3 Qd4 13.Nc3 などと続く。


参考文献
Scotch Game - Wikipedia
starting out: the scotch game - Jhon Emms
the Scotch game - Yelena Dembo and Richard Palliser
Beating the Open Games - Mihail Marin
Play the Open Games as Black - John Emms

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