Hippopotamus Defence


ヒパ パダマス ディフェンス。Hippo( ヒッポ )と呼ばれることが多い。
黒のマイナーピースを 7th ランク、ポーンを 6th ランクに並べる定跡。Hippopatamus は カバ のことで、何故その名前がついているかは不明。

カバは動きが鈍いようなイメージだが、野生のカバは どう猛 で縄張りに入ってきたワニやライオン、人などに攻撃することがあるという。

Hippopotamus Defence は低く構えて、後から反撃する傾向があり、そのような反撃が、縄張りに入ってきたものへ攻撃する カバを連想させたのかも知れない。
黒側から見た駒配置が カバの顔に似ているという情報はあった。


基本形


ダブルフィアンケット、ナイトを d7 e7 に配置、6th ランクに a6 b6 d6 e6 g6 h6 ポーンを配置。Hippo を知らなければ、奇妙に思うことだろう。

6th ランクにすべてのポーンを配置する場合もあり、白からすると、初心者のような指し方に思えるが、ポーンブレイクから思わぬ反撃が始まるなど、油断できない。


1.e4 g6


Modern Defence。ある程度 進んだ局面にならないと Hippo になるか
分からない。

いろんな手順で Hippo になるのと、白の多くの指し手に対し、Hippo で対抗
できるため便利な定跡だが、閉じた局面になること、1手のミスから崩れていく場合も多いこと、などから中級者( R1500 ~ )以上 向きの定跡と言える。


2.d4 Bg7


白はセンターにポーンを2つ並べる、よくある展開。両ビショップの
利きが開き好形。

黒はキングサイドにフィアンケット、後からセンターに反撃を加えていく
ことができる。


3.Nc3


黒が キングサイド フィアンケットしている場合、白はクイーンサイドのピースを展開し 0-0-0 すれば、キングサイドでポーンを進めて攻撃できる。


3...d6


白 e4 → e5 を妨げ、Bc8 の利きが開かれる。

d6 ポーンは e7 → e5 や c7 → c5 をサポートできるが、安易にそれを
行うと、不利を招くため、状況を見て行いたい。

この後、黒が Nf6 とすると Pirc Defence に Transpose する。
Modarn Defence は Ng8 の展開を遅らせ、Bg7 の利きを活用する。


4.Be3


クイーンサイドのビショップを展開、d4 ポーンを守り Qd1 → Qd2 とすれば、0-0-0 可能となり、キングサイドに攻撃を加えやすい。

4.d5?
Bg7 の利きが Nc3 に及ぶのは好ましくない。
黒が e7 → e5 及び c7 → c5 としてない状況で d4 → d5 とすると
e6 または c6 で d5 ポーンに反撃を受け、白は d5 ポーンを c2 → c4 で守れない。



4...Nd7


定跡では 4...a6 や 4...c6 が多いが、ここで Nd7 とすると白としては
何だろう? と思うかも知れない。

白が 0-0-0 する可能性があるため、Nb8 を d7 に展開すれば、c7 ポーンを進めクイーンサイド攻めに活用できる。あとで Nd7 → Nb6 とすることも考えられる。


5.Nf3


5.Qd2 とする方が多いが Nf3 とすれば 0-0 する選択もある。

白はピースを展開しやすく、スペースを得て好形に思えるが、c3 f3 にあるナイトが c と f ポーンの前進を妨げており、それが後で厄介になる場合もある。


5...a6


まだ Modern Defence の変化内。
b7 → b5 が可能となる。


6.a4


b7 → b5 を妨げられるが 白 0-0-0 しづらくなる( しない )。

6.Qd2  6.Bc4  6.Bd3 の変化もある。


6...b6


Bb7 とするためだけでなく、白 a4 → a5 に b6 → b5 とできる。
この辺りで Hippo になりそうな形になってきた。


7.Bc4


攻撃的な位置に展開、黒が e7 → e6 とすると黒は f6 地点をポーンで
守れなくなる。しかし、黒は e7 → e6 から Ng8 を e7 に展開でき
白 Bg5 に対しては h7 → h6 から g6 → g5 とできる。



7...e6


d5 を支配、f7 → f5 をサポートできる。また、白 d4 → d5 に対し e6 → e5
白 e4 → e5 に対し d6 → d5 とできる。

Ne7 とできるようになる。

7...Bb7?? 8.Ng5 e6 9.Bxe6! fxe6 10.Nxe6 Qc8 11.Nxg7+ Kf7
12.Nh5 gxh5 13.Qxh5+ 白が良い。


8.0-0


マイナーピース展開からキャスリングまでスムーズに行えたが
ここから黒の陣地を攻め込んでいくのは容易ではない。


8...Ne7


両サイドでフィアンケット、Ne7 Nd7、6th ランクのポーン形で Hoppo となる。

8...Bb7 9.d5 e5 10.Qe2 Ne7


9.Qd2


Bh6 で黒マス交換できれば、黒のキングサイドは黒マスが弱くなる。
d1 の場所が空いたため、Ra1 → Rd1 などとできる。

Nc3 Nf3 により、白は c と f ポーンを進められないため
この辺りから困りだす。ただ、黒も少しずつ陣形を整えていくため
白がすぐ不利になることもない。


9...h6


黒マスビショップ交換を避けるため。この状況で黒が 0-0 すると
白に Bxh6 とされるので黒は気をつけたい。

h6 ポーンは g6 → g5 をサポートすることもできる。

6th ランクにポーンが6つ並んだ。黒はスペースでは劣っているが
ポーンを進める手がいろいろある。


10.Rad1


d ファイルはオープンファイルではないが、開く可能性はあり
ポーンが進んでいるファイルにルークを配置する。

白はマイナーピース展開とキャスリング済みなので、戦略を考えながら
より良い位置にピースを配置していく。

10.h3 Bb7 11.Rfe1 Nf6 12.Bf4 g5


10....Bb7


黒の駒配置は左右対象で面白い。この駒配置が白黒どちら側から見てもカバの顔に見えなくもない。

ここまでの駒配置を黒は覚えやすいが、Hippo を使って勝つには
ここからが大事になってくる。安易にポーンを進めてはそこから
崩れてきたり、キャスリングも慎重に行う必要がある。

白が攻めてきた方が対処を考えられるが、白がなかなか攻めてこないと
黒としてもやりづらい。マスターのゲームを見て、どのような展開に
なるか学びたい。


11.Rfe1


キャスリングしてない黒にとっては d1 e1 に白ルークがあるのは
嫌な感じがする。また、白は h6 ポーンを失うので 0-0 できない。


11...Nf6


e4 ポーンに2重攻撃、白に対応を迫る。
12.e5 とされると嫌な感じがするが 12.e5 Nfd5 13.Nxd5 Nxd5
14.Bb3 Nxe3 15.Qxe3 d5 などで互角。


12.d5


12.e5 より良い模様。
12.Bd3 Ng4 13.Bf4 g5 14.Bg3 Nf6


12...e5


白のピースが好位置にあるため、オープンな局面にすることは避けたい。
12...exd5?! 13.exd5 Kf8 14.Nh4 b5


13.h3?


Ng4 を妨げ悪くない気がするが良くない模様。

黒が Ne7 → Ng6 → Nf4 としてくることが考えられ、白は g2 → g3 で
黒 Nf4 を防げるが、h3 としていると、g3 とした時 h3 ポーンが弱くなり
g2 → g4 としても h3 ポーンはバックワードポーンとなる。


13...g5


Hippo でよくある手。Ne7 → Ng6 とできるようになる。
f5 h5 が Hole となる。


14.g4?


h4 f4 が Hole となり、黒に Nf4 を許す。


14...Ng6


Nf4 とする狙い。駒交換が起きてない面白い展開。

白はセンターファイルに運んだルークが役立ってない。
Nc3 と Bc4 も役立ってないのでどう使うか?
Nc3 は f5 や c6 に運ぶことは可能。

b2 → b4 から c2 → c4 → c5 とすれば ファイルが開きそうだが
手数がかかる。

キングサイドで攻防が起きそうで、黒は Bb7 → Bc8 としてキングサイドに白マスビショップを活用することも可能。

黒はどちらにもキャスリング可能だが、状況を見て。安易にキャスリングしない。

Ng6 → Nf4 とした後、白が Nf4 を取ると、...gxf4 で g ファイルが
開き、攻防が起きやすくなる。



補足



Hedgehog( ヘジホッグ、ハリネズミ )。
こちらも動物名がついている黒の定跡。黒の c5 ポーンと 白の d4 ポーンが
交換され、上図のような駒配置が基本形となる。
6th ランクにポーンを配置しているのが Hippo に少し似ている。

YouTube では Hippo より Hedgehog の動画が多い。


参考文献・動画

The Hippopotamus Defence - Alessio De Santis( おすすめ!! )
Hippopotamus Defence - Wikipedia
カバ - Wikipedia
Maghsoodloo Faces The Super Solid Hippopotamus Defense
Playing Mind Games | Patron Training Game
hippopotamus - pronunciation (American, British, Australian, Welsh) 
Pronunciation Tutorial: How to pronounce "hippopotamus"
Hedgehog (chess) - Wikipedia
Exploring the Hedgehog - GM Yasser Seirawan
The Hedgehog Center: Winning with Black! - (EMPIRE CHESS)

コメント

hitsujyun さんの投稿…
Libelle64 さん

ありがとうございます。あまり多くのオープニングに手を出すと勝率は下がりますが、実際に自分でいろいろ使ってみて、ためになったのと、面白さがあります。1.e4 に対して今は 1.e6 1.c5 に加え Hippo 狙いの 1.g6 も使ってみることにしました。

Winning Chess Openings は私にとってはオープニングの面白さを与えてくれた本です。1日1ページでも読むことができれば、徐々に英文を読むことに慣れるのではないかと思います。最後まで読むことができれば、きっと他の洋書も読むことができるようになると思います。

英文の意味は半分分かれば十分で、この単語の意味は分からないと困る、という単語だけ辞書で調べれば良いと思います。頑張ってください!

このサイトがオープニングの面白さを知り、いろんなオープニングを使うことの参考になれば幸いです。ご訪問ありがとうございます。
匿名 さんのコメント…
オープニング入門の完成、おめでとうございます。お疲れ様でした。
まだまだオープニングをみっちり学習するほどの実力もない初心者ですが、楽しみに読ませていただいていました。
また、最初から読み直して勉強させていただきます。
本当にありがとうございました!
hitsujyun さんの投稿…
ありがとうございます。長くかかりましたが、一通りのオープニングを解説でき、自分も学ぶことが多かったです。これからオープニングを学ばれる方々のご参考になりましたら幸いです。

オープニングはチェスの面白さの1つですね。ご自身の得意なオープニングを作られて頑張ってくださいー^v^