Petroff Defence


ペトロフ ディフェンスを広めたロシアのチェスプレイヤー Alexander Petroff ( 1794~1867年 )の名に因んでいる。Russian Defence とも呼ばれる。

2...Nf6 とすれば、2...Nc6 から生じる 3.Bb5 Ruy Lopez 3.Bc4 Italian Game 3.d4 Scotch Game を避けることができる。



1.e4 e5 2.Nf3 Nf6

e5 ポーンを守ることなく、e4 ポーンに攻撃を加えてのナイト展開、白黒 対称形となる。黒は Nxe5 とされても対処法がある。

白3手目は主に4つ
3.Nxe5 Classical variation
3.d4 Steinitz Variation
3.Nc3 3...Nc6 で Four Knights Game に transpose するか 3...Bb4 となることが多い。
3.Bc4 3...Nxe4 4.Nc3 Boden-Kieseritzky Gambit、または 3...Nc6 だと Two Knights Defence に transpose する。



3.Nxe5

守られていない e5 ポーン、取れるものは取っておこう! という考え、取って不利になるのであれば取ることはない。

他のピースやポーンを動かさず、同じ駒を2度動かすことは、センターの支配、早期ピース展開、キャスリングに遅れを取ることになりそうだが、ポーンを取っているため、黒3手目が限られてくる。



3...d6

e4 ポーンを取るために最適な方法。Ne5 をセンターから追い払うだけでなく、e5 を支配し c8 - h3 のラインを開く、Bf8 の展開を妨げてしまう面もある。




4.Nf3

Main Line 。ナイトの場所として理想的なマスへ後退。

ナイトはできるだけ守りの利いたマスに置くことを覚えておこう。ナイトに限らず、無防備な駒は相手にねらわれやすいため、守りを利かせておくことで相手は攻め辛くなる。

相手の無防備な駒をねらうのもひとつの戦術。ただし、タダ取りに見える駒が、実はワナだったりすることもあるため、特にポーンがタダで取れそうなときは、そのポーンを取ったら相手はどうしてくるか安全確認を怠らないようにしよう。

4.Nc4 Paulsen's Variation
4.Nd3 Karklin's Attack
4.Nxf7 Cochrane Gambit



4...Nxe4

e4 ポーンを取ってマテリアル(駒の損得)の均衡を保つ。ここでポーンを取らなければ黒不利。



5.d4

センターにポーンを進め、ピース展開を妨げない手。白は両ビショップのラインが開かれているのに対し、黒は d6 ポーンが Bf8 の展開を妨げている。

5.Nc3
ピースを展開させ、センターの好位置にあるナイトを攻める。黒は 5...Nf6 と引いてしまうと 6.d4 とされて白が好形。通常 5...Nxc3 6.dxc3 となり、白はダブルポーンができるので黒は悪くないが、白はスペースを得るのとセンターでルークを使うためのファイルがひとつ増え、柔軟に対応できる。

5.Qe2
5...Qe7 6.d3 Nf6 でクイーン交換になっても黒は問題なし、7.Qxe7 と交換を急いでしまうと、7...Bxe7 で黒のピース展開を助けるようなもの、不要な交換は避けるべき。

5.d3
Bc1 のラインが開かれる一方、Bf1 のラインが妨げられる。黒は Nf6 で全く問題なく、白は黒に問題をもたらしていない。

5.Bc4
5...d5 でビショップがまた動ごかねばならない、6.Be2 なら手損だし、6.Bb3 でも黒は センターの好位置にポーンを進めることができたのと、Bf8 のラインも開かれ好形になる。



5...d5

より良いセンターの位置にポーンを進め、Bf8 のラインも開かれる。同じポーンを再度動かすことになるが、3...d6 で白ナイトに移動を強要しているため、黒は白に対し展開の遅れをとっていない。

5...Be7 6.Bd3 Nf6 黒は悪くないが、白が主導権を握っている。



6.Bd3

Ne4 を攻めながらの展開、効果的にキャスリングの準備をする。

Bd3 の位置は、黒がキングサイドへキャスリングした場合、h7 へ攻撃のねらいもある。一方 Bg4 で Nf3 をピンされる可能性もある。

6.Be2
Ne4 にプレッシャーを与えていないため、消極的な手。



6...Be7

Ne4 は d5 ポーンに守られているため、Bf8 を展開し黒もキャスリングの準備をする。




7.0-0

キャスリングが自然な流れ。



7...Nc6

キャスリングするより積極的にピース展開させる方を選んだ。8.Re1 となったときには 8...Bg4 として Nf3 をピンするねらい。




8.c4

Ne4 を守っている d5 ポーンを攻める。黒は 8...c6 として d5 ポーンを守ることができないし、8...dxc4?? とすれば 9.Bxe4 となる。

8.c4 とすることで d4 ポーンが isolated pawn(孤立ポーン)になるため、d4 ポーンを他のポーンで守れなくなるという面もある。


8.c4 に対し、黒はどのように対応するだろうか?



8...Nb4

Bd3 にプレッシャーをかける手、2ビショップは戦略上 有利な要素があるため、白は安易にビショップとナイトを交換したくない。

8...Nf6 も悪くなく、この手の方が分かりやすいかも知れない。Bd3 の攻撃をかわし、d5 ポーンを守っている。白は 9.Nc3 として、d5 ポーンにプレッシャーをかけてくる。
8...Nf6 9.Nc3 0-0 10.h3 Nb4

8...Be6 は自然な感じがするが、9.cxd5 で容易に d5 ポーンを失い、Ne4 が攻撃されたままで、8...Nb4 と 8...Nf6 より劣る。




9.Be2

2ビショップを保つため、ナイトと交換をさけ後退させる。これにより Ne4 への攻撃が無くなる。

9.cxd5 とすると 9...Nxd3 で黒はビショップを取る。白は2ビショップの要素を失うが、ビショップを動かす手を省いたことにより、10.Qxd3 Qxd5 11.Re1 でまだキャスリングしてない黒に対しピンを活用する。11...Bf5 12.Nc3 Nxc3 13.Qxc3 Be6



9...0-0

ここで黒はキャスリングのタイミングを得る。

9...Be6 10.Nc3 0-0
9...dxc4 10.Bxc4 0-0
でキャスリングが遅れる場合よりも良い。



10.Nc3

まだ白は Nb1, Bc1, Qd1 を展開させていないため、この状況で適切なピースを展開させる。1度も動かしてないピースを早期に展開し、活用させることは戦力を高める。

10.Nc3 は d5 ポーンと Ne4 の両方に攻撃を加える良い手、10.Nbd2? では d5 ポーンを攻めていないためプレッシャーが半減する。

10.a3 で Nb4 を追いやるのも悪くない。
10.a3 Nc6 11.cxd5 Qxd5 12.Nc3

10...Be6 11.Ne5! f6 12.Nf3 Kh8 13.Re1
10...Bf5 11.a3 Nxc3 12.bxc3 Nc6 13.Re1

などと続く


参考文献

Petrov's Defence - Wikipedia
petroff defence - A.Raetsky and M.Chetverik

コメント

Takuya さんの投稿…
素晴らしい記事ですね。勉強になります。つい先日、ペトロフディフェンスを受けて負けてしまいましたので、参考にさせていただきます。
hitsujyun さんの投稿…
ありがとうございます。私は今まで 1.e4 e5 2.Nf3 Nf6 となった場合は 3.Nc3 として Four Knights Game に持っていこうとしましたが、この記事をきっかけに 3.Nxe5 を使っていくことにしました。