ヴィエナ ゲーム。19世紀半ば ウィーン( 英語では Vienna )のプレイヤーの間で 1.e4 e5 2.Nc3 に続く変化が研究されていた。その中で最も有名だったスイス人
Carl Hamppe( 1814~1876年 )の名から元は Hamppe's Game と呼ばれていたが、ドイツのプレイヤー Curt von Bardeleben( 1861~1924年 )による小冊子
Die Wiener Partie( The Vienna Game )に因み、Vienna Game と呼ばれるようになった。
積極的に攻めたければ 3.Bc4 から f7 をねらい、3.f4 なら f ファイルを開きルークを活用させ、3.g3 でフィアンケットすれば positonal play が強まるなど柔軟な指し方ができる。
黒はたいてい 2...Nf6 とするが 2...Nc6 も可能であり、まれに 2...Bc5 3.Nf3 d6! というのもある。有名な Frankenstein-Dracula Variation ( 2...Nf6 3.Bc4 Nxe4 ) では恐ろしいほど複雑な展開になり得る。
1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 Ruy Lopez や 1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bc4 Italian Game の人気が高く Vienna Game についてあまり知らないプレイヤーが多いため、クラブプレイヤーレベルでは強力な武器になると言われる。
1.e4 e5 2.Nc3
e4 ポーンを守り、センター d5 のマスも支配している。
クイーンサイドのナイトを先に展開しているため、キングサイドにキャスリングするのが遅れる、クイーンサイドにキャスリングすることも考えられる。
黒2手目は主に 2...Nf6 と 2...Nc6。白ならば 2...Bc5 も対応できるようにしたい。
2...Nf6
キングサイドにキャスリングする準備となり、...d5 をサポートできる。
白3手目は主に3つ
3.f4 Vienna Gambit
3.Bc4
3.g3 Mieses Variation
3.Nf3 Nc6 となれば Four Knights Game になる。
3.Bc4
黒が 3...d5 とするのを妨げ、f4 とするねらいがある。
3...Nc6
Bf8 を展開させればキャスリングできるようになるので Bf8 を展開させたくなるが、焦る必要はなく 3...Nc6 が堅実な手となる。e5 ポーンを守り、センターの d4 を支配している。
3...Nxe4
Frankenstein-Dracula Variation 複雑な展開になる。白はこの後 4.Qh5 とする
( Qxf7# のねらい )。4.Nxe4? では 4...d5 で黒はピースを取り返すことができ、両ビショップの利きが開いて好形。
3...Bc5
4.d3 d6 5.f4 Nc6 6.Nf3 となれば King's Gambit Declined に transpose
4.d3
Nc3 に守られている e4 ポーンをさらに守る。Bc1 の利きが開かれるので f4 としたとき Bc1 でサポートできる。
4...Bb4
...d5 とするために Nc3 をピンする。
4...Na5 は 5.Nge2 Nxc4 6.dxc4 で黒はナイトとビショップを交換できるが、白はビショップを失った代償として d5 の支配を強化することができる。
5.Ne2
Nc3 をサポートし、キャスリング後 f4 とするねらい。
5.f4 は 5...d5 または 5...exf4 6.Nf3 d5 で黒が好形。
5...d5
exd5 を強いる。Bc8 の利きが開かれる。
5...d6 も良い。
5...Nd4?! 6.0-0 Nxe2+ 7.Qxe2
6.exd5
ビショップを失う Bxd5 は劣る。
6...Nxd5
Nc6 を攻撃している d5 ポーンを放っておくことはできないので取る。
7.0-0
Bb4 にピンされている Nc3 がさらに Nd5 から攻撃を受けたので、キャスリングでキングを安全な場所へ移し、Nc3 のピンを外す。
7.Bxd5 Qxd5 となると白はビショップを失うことになるが、8.0-0 で Nc3 のピンが外れるため Qd5 は移動する必要があり、その分時間を稼ぐことができる。
7...Be6
白は Nc3 を動かせるようになったため、黒は2重に攻撃を受けている Nd5 をどうすべきか考える。7...Be6 はまだ展開してない残りのマイナーピースを展開させ、センターの tension を維持しようとする手。
駒が取れる状況では、駒を取ることに気をとらわれやすいが、tension を維持することが大事な場合もある。
"tension:テンション、緊張。互いに駒を取れる形。特に中央近くでPどうしがぶつかり、双方から取る可能性のある形を言う。Pどうしの場合はleverとも言う。" チェス用語小辞典(英和)より
黒が tension を維持した 7...Be6 の局面を見ると、定跡を知らなければ白は次に何を指したらよいか迷うところ。単に定跡で指す前にどのような手が考えられるか、考えてみよう。
候補手を考える前にまず安全確認をしてみると
...Nxc3, Nxc3 Bxc3, bxc3 または
...Nxc3, bxc3 で白はダブルポーンができる可能性があるのでこれを考慮に入れる必要がある。
また駒交換が起きそうなときは駒の価値をよく考えてみよう。
Bishop pair( two bishops )を保つようにする
Bad Bishop と Good Bishop を交換する
Bad Bishop と Good Knight を交換する
Knight を Bishop と交換する
また駒を取る手だけに気をとらわれずに、他の手も考える必要がある。
黒はキングサイドにキャスリングできる状態だが、クイーンサイドにキャスリングする可能性もある。白はすでにキャスリングを済ましているという利点があるので、黒のキャスリングを妨げるような手も考えたい。
交換となる手は
8.Nxd5
8.Bxd5
展開させてない Bc1 を展開させる 8.Bd2 はどうだろうか?
8.a3 という手も考えられる。
8.f4 は不鮮明で危険な感じがする。
こういうことを考えてから定跡を見るのは大事。
8.Bxd5
定跡では一般的な手。白は Bishop pair をあきらめたことになるが ...Nxc3 を防ぐことができ、黒は 8...Bxd5 とするしかなく、黒のキャスリングを遅らせることにもなる。
8.Ne4 に対して 8...f5? は 9.Ng5 で白好形。
8.Ne4 は ...Nxc3 を回避している。黒はキャスリングできるが定跡では 8...Be7 が多い。
8.Bb3
8...Nxc3? となれば 9.bxc3 Bxb3 10.axb3 で a ファイルが開かれ白好形。
8.Bb3 0-0 9.Nxd5 Bxd5
8.Nxd5 Bxd5 9.Bxd5 Qxd5
8.a3 Bxc3 9.Bxd5 Qxd5 10.Nxc3 Qd7
8.Bd2 0-0 9.a3 Be7
8.f4? Nxc3 9.bxc3 Bc5+ 10.Kh1 Bxc4 11.dxc4
8...Bxd5
クイーンで取るわけにはいかないのでビショップで取るしかない。
8...Bxc3?? 9.Bxc6+ bxc6 10.Nxc3 で白優勢
9.f4
f ファイルを活用するねらい。
9.Nxd5 は 黒が Bishop pair でなくなるが、9.f4 の方がまだキャスリングしてない黒に対して有効。
9...0-0
10.fxe5 となっても 10...Nxe5 とできるため、キャスリングを済ませておく。
10.f5
fxe5 や Nxd5 に気をとらわれやすいが f5 として黒キングに対して徐々にプレッシャーをかけていく。
10.fxe5 Nxe5 11.Nxd5 Qxd5 12.Nf4
10...f6
e5 ポーンを守るとともに f5-f6 を防ぐ。白に Nxd5 とされれば Bishop pair でなくなる。
10...Bxc3 11.bxc3 f6 12.Ng3
11.Ng3 Bf7 12.Nce4 Kh8 などと続く。
参考文献
Play the Open Games as Black - John Emmsvienna game - Gary Lane
Vienna Game - Wikipedia
コメント
手間はかかりますが、自分のゲームのオープニングでどんなミスをしているか、チェスソフトを使ってゲームの見直しをして、同じミスを繰り返さないようにするとかなりオープニング プレイが改善されていきます。
不要な手を指してピース展開が遅くなり不利となることもありますので、定跡を少しずつ覚えていくといいと思います。
オープニングで常にベストムーブを指していくのは難しいですが、大きなミスをしなければ中盤以降の勝負となります。悔しさが大きい分、勝った時の喜びも大きいと思います、あせらずに頑張ってください^^