Danish Gambit


デイニッシュ ギャンビット。白はポーンを1つ か2つ 犠牲にしてピースの早期展開をねらう。黒はギャンビットを受け入れることも拒否することも可能である。

1830年に Blankensteiner というデンマークの( Danish )法学者がこのオープニングを初めて分析した。

1856年には スウェーデンの Dr. H.A.W. Lindehn が 4.Bc4 で2つ目のポーンを犠牲にすることを提案。

1867年 パリのトーナメントで Danish Gambit を使った デンマークの Martin Severin From( 1828 ~ 1895年 )が Danish Gambit に功績を残したと言われている。
ちなみに 1.f4 の Bird's Opening で 1.f4 e5 とするのを From's Gambit と言い、この人の名がついている。

Alekhine, Marshall, Blackburne, Mieses などのマスターも Danish Gambit を使っていたが、黒の対抗手段が見つかり改善されていったため 1920年代に人気が衰えていった。

1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.d4 exd4 4.c3 Scotch Game の Göring Gambit に transpose することも多い。




1.e4 e5 2.d4

黒に 2...exd4 とさせるねらい。Bc1 の利きが開かれる。




2...exd4

Center Game と呼ばれる。黒としては素直に取るのが最善だが他の候補手を考えてみるのも勉強になる。

2...Nc6
3.Nf3 とすれば Scotch Game に transpose だが 2...Nc6 を咎めるには 3.dxe5 や 3.d5 とする方が望ましい。

2...d6
3.Nf3 とすれば Philidor Defence に transpose だが 3.dxe5 dxe5 4.Qxd8+ Kxd8 となれば黒はキャスリングできなくなるので黒はこれを避けるべき。

2...d5
実際のゲームではほとんど起きないだろうが面白い局面。
3.dxe5 dxe4 となれば 4.Qxd8+ で黒はキャスリングできなくなる。
3.exd5? では 3...Qxd5 で黒は問題ないので白は気をつけたい。




3.c3

Danish Gambit。d4 ポーンをクイーンで取り返すことなく黒に c3 ポーンを取ることを誘う。

3.Qxd4 とすれば Center Game のメインラインとなり黒は 3...Nc6 としてクイーンを攻撃しながらナイトを展開できる。その後 4.Qe3 Nf6 5.Nc3 Bb4 6.Bd2 などと続き、白はクイーンサイドにキャスリングしようとする。


3.c3 の後は主に

3...d5 ギャンビットを拒否する安全策
3...dxc3 ギャンビットを受け入れる

となる。

白としては 3...dxc3 となることを望むだろうが 3...d5 の対策も必要。


3...dxc3 となった場合主に

4.Nxc3 Alekhine Variation
4.Bc4 Lindehn's continuation

となる。

4.Nxc3 では Göring Gambit に transpose しやすい。

4.Bc4 cxb2 5.Bxb2 となれば白は黒よりポーンが2つ少なくなる代償として、展開した2つのビショップがセンターを支配し、キングサイドに対する直接攻撃が強力である。ポーンがなくなったことでスペースも活用できる。




3...d5

黒としては白が望む形にするより無難な手で対応する。

e4 ポーンを攻撃し白が d4, e4 にポーンが並ぶ形にさせない。
黒も両ビショップの利きが開かれる。

白4手目は何が良いだろう?




4.exd5

最善手、exd4 とされる前に自分から取っておく。

4.Qxd4 Qe7 5.Qxd5 Nf6

4.cxd4? dxe4
白は f3 にナイトを展開できなくなり黒が良い。

4.e5?!
Nf6 を妨げる一方、4...dxc3 5.Nxc3 d4 となると 白も Nc3 の場所を追いやられる。




4...Qxd5

クイーンですぐ取り返すことで問題ないが、安易にすぐ駒を取ると思わぬ反撃を食らうこともあるため、少なくともポーンを取って不利になることはないか安全確認を必ず行うことと、Qxd5 以外に良い手はないか考える習慣をつけよう。




5.cxd4

5.Qxd4 Qxd4 6.cxd4 でも白は孤立ポーンができるが、クイーンを活用させることができなくなり、孤立ポーンを持っていることの不利が大きくなる。

孤立ポーンは他のポーンで守ることができないため、弱さもあるが重要なマスを支配していたり必ずしも不利になるとは限らない。




5...Nc6

5...Nf6 とするのも悪くないが、5...Nc6 の方が d4 ポーンを攻めることで白に守りを強いる。このような若干の差が徐々に大きな差となっていくのでそのような感覚を大事にしよう。




6.Nf3

d4 ポーンを守るナイト展開。

この手を指す前に 6.Nf3 Bg4 とピンされたらどうするか( Bxf3 や Nxd4 から d4 ポーンを失う可能性 )、さらにその後黒は 0-0-0 できるのでそうなったらどうするか考えておきたい。先の先を読むことは難しいが考えることが大事。




6...Bg4

d4 ポーンを守っている Nf3 をピンしながらのビショップ展開、0-0-0 も可能となる。

黒も 6...Bg4 とする前に 7.h3 となったらどうするか、7.Nc3 でクイーンを攻撃されたらどうするかなど考えておきたい。




7.Be2

Nf3 を守りキャスリングの準備。

定跡で覚えられる手数だが、7...Bxf3 や 7...Nxd4 となったらどうするか?

7.Be2 Bb4+
7.Nc3 Bb4
7...0-0-0

なども考えられるので慎重に指したい局面。

7.h3? Bxf3 で黒優勢 → 8.Qxf3 Qxf3 または 8.gxf3 Nxd4。
7.h3? Bh5? では黒はチャンスを逃してしまう。




7...Bb4+

攻撃しながらのピース展開、白は受けを強いられ黒主導の展開が続く。

7...0-0-0 8.Nc3 Qa5 9.Be3
7...Bxf3 8.Bxf3 Qc4 9.Nc3
7...Nxd4?? 8.Qxd4 Qxd4 9.Nxd4




8.Nc3

クイーンを攻撃しながらのナイト展開、Bb4 にピンされているためこのままでは黒クイーンを取ることはできないがプレッシャーになる。

8.Nbd2? 0-0-0 9.0-0 Nf6
8.Bd2? Bxd2+ 9.Nbxd2 0-0-0




8...Bxf3

ビショップを失うことになるが d4 ポーンを守っているナイトを取り除く。




9.Bxf3

9.gxf3?? ではダブルポーンができる上に d4 ポーンも失うことになる。




9...Qc4

Bf3 の攻撃を受けている Nc6 を守りながら d4 ポーンへの攻撃も残し
...Bxc3+, bxc3 Qxc3+ のねらいもある。

どこへクイーンを動かすかこういう時にミスを犯しやすいので注意。

9...Qxd4?? 10.Bxc6+ はクイーンを失うので1番指してはいけない手。

9...Qd7? 10.0-0 Nxd4? 11.Nd5 Bc5 12.Be3
9...Qe6+? 10.Be3




10.Bxc6+

d4 ポーンを攻撃しているナイトを取り除く。チェックなので黒はポーンかクイーンで取ることを強いられる。

10.Qb3 Qxb3 11.axb3 Nge7




10...bxc6

ダブルポーンになるが Qc4 の利きがあるため白はキャスリングできない。
...Bxc3+, bxc3 Qxc3+ のねらいも残る。

10...Qxc6 も良いが白にキャスリングを許す。
10...Qxc6 11.0-0 Ne7 12.Qb3

11.Qe2+ Qxe2+ 12.Kxe2 Ne7 13.Be3 0-0-0 などと続く。


参考文献

Beating the Open Games - Mihail Marin
Modern Chess Openings 15th Edition
Danish Gambit - Wikipedia

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