Slav Defence


1.d4 d5 2.c4 Queen's Gambit の対処法の1つ。1590年には分析されていたが
1920年代までは広範囲に分析されていなかった。

Alapin 、Alekhine 、Bogoljubov 、Vidmar など多くのスラヴ系マスターがこの
オープニングの発展に貢献したことに因んでいる模様。

白黒ともに変化が多いので、黒プレイヤーがこのオープニングを使うかどうかは好みによるだろう。

主な変化
3.Nf3 Nf6 4.Nc3 Main Line
4...dxc4 Slav Accepted
4...e6 Semi - Slav Defence
4...a6 a6 Slav

3.Nf3 Nf6 4.e3 Slav Declined

3.Nc3 e6 Semi - Slav Defence
3.cxd5 cxd5 Exchange Variation

Slav Defence では Bc8 が展開できるよう e7 → e6 とするのを遅らせ
Semi - Slav Defence では Bc8 を展開させる前に e7 → e6 とする。


1.d4 d5 2.c4 c6


2...e6 の Queen's Gambit Declined では、e6 ポーンが Bc8 の展開を妨げているが、2...c6 は d5 ポーンを守りつつ、Bc8 の展開を妨げてない。

e7 → e6 としていなければ、...Nf6 とした後 白に Bg5 とされても Nf6 はピンされてない状態。

...dxc4 としてから ...b5 で 黒 c4 ポーンを守ったり、白 Bxc4 に対し ...b5 で Bc4 を攻撃しテンポを得られる。


3.Nf3


キングサイドのナイトを先に展開、d4 ポーンを守りつつ、センターの e5 も支配する。e6 にポーンがないため、黒が ...Bf5 や ...Bg4 としてくる可能性を考えておきたい。

3...dxc4 となっても 4.e3 、4.e4 、4.Nc3 などで白は問題ないようだが、白としては対処できるようにしておきたい。
3...dxc4 4.e3 Be6 5.a4 Nf6 6.Na3 c5 7.Nxc4 or 6...Bd5 7.Nxc4
3...dxc4 4.e3 b5 5.a4 e6 6.Nc3 Bb4 7.Bd2 a5 8.axb5

白3手目は 3.Nc3 や 3.cxd5 もあるので、始めはいろいろ試してみると良いだろう。

3.Nc3 e6 Semi - Slav Defence → 次回記事で扱う予定
3.Nc3 Nf6 4.Nf3 Main Line へ transpose
3.Nc3 dxc4 白としては意外と厄介かも
3.Nc3 Bf5? 4.cxd5 cxd5 5.Qb3 で黒はポーン1つ失う

3.Nc3 e5 Winawer Countergambit
4.dxe5 d4 5.Ne4 Qa5+ 6.Bd2 Qxe5 7.Ng3 Nf6
4.cxd5 cxd5 5.dxe5 d4 6.Ne4 Qa5+ 7.Bd2 Qxe5 or 7.Nd2 Nc6
4.e3 e4 5.Qb3 Nf6 6.Bd2 Be7 7.Nh3 Qb6

3.cxd5 cxd5 Exchange Variation 後述補足に記載


3...Nf6


0-0 の準備となり、センター e4 と d5 を支配する自然なピース展開。
白が e4 とするのを一時的に妨げられる。 

3...e6 Semi - Slav Defence 

3...Bf5
3手目で ...Bf5 とするのは 4.cxd5 cxd5 5.Qb3 で守りのない b7 ポーンを攻められ、かつ、黒 d5 ポーンが黒クイーンにしか守られておらず、白に主導権を握られる。3.Nc3 Bf5? よりましだが、3.Nf3 Bf5 4.cxd5 cxd5 5.Qb3 b6? は 6.e4 Bxe4 7.Bb5+ Nd7 8.Ne5 Ngf6 9.0-0 などで白が良い。


4.Nc3


メインライン。Nb1 を好位置に展開。4...dxc4 となった場合、5...b5 で c4 ポーンを
守られることに対しては、5.a4 と対応できる。

4.cxd5 Exchange Variation に transpose

4.e3 Slav Declined
Bc1 の展開を妨げてしまうが、...dxc4 に対し Bxc4 とできる。Bc1 は後で e4 として c1 - h6 ラインを開いたり、Bd2 としたり、b3 とした後 b2 や a3 に展開させることが
できる。

4.e3
4...Bf5 5.Nc3 e6 6.Nh4 Bg6 7.Nxg6 hxg6
4...Bg4 5.h3 Bxf3 6.Qxf3 e6 7.Nc3 Nbd7
4...a6 5.Nc3 b5 6.b3 Bg4 7.Be2 e6


4...dxc4


黒は d5 ポーンを守りつつ、白 e4 を防いでいたのを自ら放棄する。というのも、4...Bf5?! としてしまうと 5.cxd5! とされて白にとって好形となるため。白に cxd5 とされる前に、4...dxc4 としておく。

4...Bf5?! 5.cxd5!
5...cxd5?! 6.Qb3! Qb6!? または 6...b6
5...Nxd5 6.Qb3 Qb6! 7.Nxd5 Qxb3 8.Nxc7+ Kd7

4...e6 Semi - Slav Defence に transpose

4...a6!?
...a6 としておけば 白 Qb3 に対して ...b5 とできるため、黒クイーンを b7 ポーンの
守りに回さなくてすみ、...Bg4 や ...Bf5 を可能にする。

4...a6!?
5.e3 b5 6.b3 Bg4
5.c5 Nbd7 6.Bf4 Nh5 7.Bd2 Nhf6 または 7...g6
5.a4 e6 6.e3 c5 7.Be2 Nc6

4...g6
4...g6 5.cxd5 cxd5 6.Bf4 または 6.Bg5 は白好形。
3.Nc3 Nf6 4.e3 g6 は Schlechter System と呼ばれ、この場合は白が Bc1 を展開する前に e3 としているため、...g6 とするのは効果的。


5.a4


...b5 を妨げ、黒 c4 ポーンを取る狙い。b4 のマスをポーンで守れなくなるため、b4 のマスが弱くなる面もある。

5.e3
d4 ポーンを守りつつ、Bxc4 の狙い。
5.e3 b5 6.a4 b4 7.Nb1 Ba6 または 7.Na2 e6

5.e4 b5 6.e5 Nd5 7.a4 e6 8.axb5 Nxc3

5.Ne5 Nbd7 6.Nxc4 b5 7.Nd2 e5


5...Bf5


...e6 とする前にこのタイミングで Bc8 を展開させる。e4 のマスを支配するので、白 e4 を一時的に妨げられる。

6.Nh4 で Bf5 が攻撃されることが考えられるが、6...e6 、6...Bc8 、6...Bg4!? 、6...Bd7 など、いくつか対応法がある。

5...Bg4
白が e2 ポーンを進め、Bxc4 としてくるため、Nf3 をピンするような形を見せる。
ただしまだ e2 ポーンが進んでないため、6.Ne5 で反撃され Nxc4 につながる。
5...Bg4 6.Ne5 Bh5 7.f3 Nfd7 8.Nxc4 e5 9.Ne4 Bb4+

5...Na6
白 a2 → a4 で弱くなった b4 のマスを活用する狙い。白に e2 → e4 、Bxc4 を許す。
5...Na6 6.e4 Bg4 7.Bxc4 e6 8.Be3 Nb4


6.e3


d4 ポーンを守り、Bxc4 を狙った自然な手。Bc1 の展開を妨げてしまう感じだが、後で e3 → e4 とできれば問題ないようだ。

6.Ne5
f3 のマスを空けることにより、f2 → f3 から e4 としてセンター支配を強固にする
狙い。黒は主に2つの対応法がある。
6.Ne5 e6 7.f3 Bb4 8.e4 Bxe4 9.fxe4 Nxe4 10.Bd2 Qxd4
6.Ne5 Nbd7 7.Nxc4 Qc7 8.g3 e5 9.dxe5 Nxe5 10.Bf4 Nfd7

6.Nh4
黒は 6...e6 7.Nxf5 でビショップペアを放棄するか、Bf5 を移動させてビショップペアを保つか選択を迫られる。

6.Bg5
悪くないように思えるが、e7 ポーンがまだ動いてないため 6...Ne4 などとされ、 この場合 7.Nxe4 Bxe4 となると、Nc3 がなくなったことにより、...Qa5 や ...Qd5 の可能性が起こる。6...Ne4 に対し Bg5 を退くのは白の主導権を失う感じ ( 6...Ne4 7.Bh4 Qa5 、7.Bd2 e6 など )。

6.Bf4
これも悪くはなさそうだが、良くもないようで 6...e6 、6...Nd5 、6...Na6 などとなる。


6...e6 


黒も e ポーンを進める自然な手。Bf8 が展開可能になる。白 Bc1 と 黒 Bf5 が
対照的。


7.Bxc4


c4 ポーンを取りビショップを展開できるので効率的。


7...Bb4


Bf8 は e7 と d6 にも展開できるが、白 a2 → a4 により b4 のマスが弱くなっているので、そのマスに展開させる。


8.0-0


自然なタイミングで 0-0。自然な展開は定跡を覚えやすい反面、ミドルゲームになって「 これからどうすれば良いだろう? 」 ということにもなりやすいので、自然な展開が途切れてからが大事になる。

8.Ne5 や 8.Qb3 などの手もあるので、白としていずれ使ってみるのもいいかも知れない。
8.Ne5 Nbd7 9.Nxd7 Qxd7
8.Qb3 a5 9.0-0 Nbd7


8...0-0


無難な手。8...Nbd7 とすることもある。8...Nbd7 では 8...0-0 の変化に transpose することもあるが、黒がまだキャスリングしてないのでそれに問題をもたらそうとする変化もある。

8...Nbd7
9.Qe2 Bg6 10.e4 Bxc3 11.bxc3 Nxe4 12.Ba6 Qc7
9.Nh4 0-0 10.Nxf5 exf5 11.Qc2 g6
9.Qb3 a5 10.Na2 Be7 11.Nh4 Be4


9.Qe2


e3 → e4 としてスペースを得ようとする狙い。e3 → e4 となれば Bc1 の利きも
開かれる。

9.Nh4
黒の白マスビショップと交換しようとする。9...Nbd7 や 9...Bg3 ですぐ交換になる場合と、9...Bg4 10.f3 Bh5 11.g4 Nd5 のように白のポーン突きを誘う場合がある。

9.Nh4 Nbd7 10.Nxf5 exf5 11.Qc2 g6
9.Nh4 Bg6 10.Nxg6 hxg6 11.Qc2 Nbd7


9...Nbd7


9...Ne4 で e3 → e4 を妨げることもできるがピース交換につながるためか、9...Nbd7 が好まれる。

9...Bg6 10.Ne5 Nbd7 11.Nxg6 hxg6 12.Rd1 Qa5
9...Ne4 10.Bd3 Bxc3 11.bxc3 Nxc3 12.Qc2 Bxd3


10.e4


Bf5 を攻撃してテンポ と スペースを得る。10...Bxc3 で e4 ポーンを失う気がするが
10...Bxc3?? 11.exf5 で白が良くなる ( 11.bxc3?? としないよう注意 )。

10.Rd1 Bg6 11.Ne5 Nxe5 12.dxe5 Nd7 13.f4 Qe7
10.Ne5 Nxe5 11.dxe5 Nd7 12.e4 Bg6


10...Bg6


10...Bg4 とすることも可能。
10...Bg4 11.Rd1 Qa5 12.h3 Bh5 13.e5 Nd5

10...Bg6 11.Bd3 Bh5 12.e5 Nd5 などと続く


補足

3.cxd5 cxd5 Exchange Variation


オープン c ファイルができるシンメトリーの局面。ドローになりやすく白プレイヤーが
それを承知で使ってくることがある。黒プレイヤーが Slav Defence を使いたくない
理由の1つに Exchange Variation を避けたいことがある。

4.Nc3 Nf6 Main Line
4.Nc3 Nc6 では 5.Bf4 e5!? や 5.e4 の変化がある。

4.Nc3 Nf6 5.Nf3 Nc6 6.Bf4

6...Bf5 7.e3 e6 8.Bb5 Nd7 9.Qa4 Rc8
6...e6 7.e3 Bd6 8.Bg3 Bxg3 9.hxg3 Qd6
6...a6 7.e3 Bg4 8.Be2 e6 9.0-0 Be7 10.Ne5 Bxe2 11.Qxe2 Rc8
6...Ne4 7.e3 Nxc3 8.bxc3 g6 9.Ne5 Bg7 10.Nxc6 bxc6 11.Qa4 0-0
など

6...a6 とする理由は、Nb5 や Bb5 を防ぐのと、...Bg4 とする時 Qb3 で
b7 ポーンを攻撃されるので、その時 ...Na5 として Qa4+ ときたら ...b5 と
するため。


参考文献

starting out: slav and semi-slav - Glenn Flear
the Slav move by move - Cyrus Lakdawala
Slav Defense - Wikipedia
スラヴ人 - Wikipedia

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