Torre Attack


トーレ アタック。メキシコの GM Carlos Torre Repetto( 1904 ~ 1978年 )に由来。当時 世界チャンピオンだった Emanuel Lasker( 1868 ~ 1941年 ) に このオープニングで勝利したゲーム が有名。そのタクティクスは The Windmill( 風車 ) と名付けられた。


主な変化

1.d4 Nf6 2.Nf3
2...e6 3.Bg5
2...g6 3.Bg5
2...d5 3.Bg5

Nf6 を Bg5 で攻撃するのは Trompowsky Attack( 1.d4 Nf6 2.Bg5 ) に
似ているが、Torre Attack は Bg5 とする前に Nf3 とする( transpose の場合もある )。


1.d4 Nf6


Indian Defence と呼ばれる。1...d5 ではなく 1...Nf6 により 2.e4 を妨げる。
後で d5 に黒ポーンを配置することもあるが、現時点では d5 にポーンがないため、b7 → b6 から ...Bg7 として a8 → h1 ラインを活用する Queen's Indian Defence や g7 → g6 から ...Bg7 とする King's Indian Defence など、多くの変化がある。


" Indian defense(s):1.d4 Nf6から黒Pが1枡前進する戦法の総称。古いルールではPは常に1枡しか進めなかった。そこで黒Pが初手で1枡進む戦法を、チェス発祥の地とされる「インド式」と呼んだ(という説が有力)。だから、1.d4 Nf6の後、黒が早期にc5を突くBenoni、d5を突くGrunfeldはIndianとは呼ばないのがふつうである。" チェス用語小辞典(英和)より引用


2.Nf3


2.c4 e5 の Budapest Gambit、2.c4 c5 3.d5 b5 の Benko Gambit を避けられる。


2...e6


d5 と f5 を支配。f8 → a3 ラインが開かれる。

e6 にポーンがあるため、Bc8 を c8 → h3 ラインで活用しづらくなるが、Bc8 は b7 → b6 から a8 → h1 ラインなどで活用可能。

黒2手目の変化は多く、白プレイヤーは対応が必要。
2...g6  2...c5  2...d6  2...b6  2...d5
など。


3.Bg5


Torre Attack。Nf6 をピン、e2 → e3 とする前に Bc1 を活用する手。
後で e2 → e4 とすることも考えられる。

1.d4 Nf6 2.Bg5 の Trompowsky Attack は Bxf6 で黒にダブルポーンを作らせる狙いがあったが、Torre Attack はそのような狙いではない。

白3手目は
3.c4  3.g3  3.e3  3.Bf4 などもある。


3...c5


1.d4 のオープニングでよくある手。白 d4 ポーンを攻撃し対応を迫る。

d8 → a5 ラインが開かれたので Qa5+ や Qb6 から守りのない b2 ポーンを攻撃されることに注意したい。

Nb8 を c6 に展開し d4 へ攻撃を増すことができる。
黒 c ポーンがなくなればハーフオープン c ファイルの活用も考えられる。

3...d5
センターを支配し手堅い感じだが、白マスビショップを活用しづらくなる。3...c5 の変化と同じになる場合もある。
  
3...h6
4.Bxf6 でビショップペアを放棄するのは良くない模様。
3...h6 4.Bh4 g5 5.Bg3 Ne4 など


4.e3


d4 ポーンをサポート、Bf1 が展開可能となる。無難な手。

4.c3
4...Qb6 や 4...b6 などの変化がある。

4.dxc5
4...Bxc5 で黒は効率よくピースを展開できる。d4 にポーンがなくなることは白にとって望ましくない。


4...Be7


Nf6 のピンを防ぐ、キャスリング可能となる。

4...Qb6 5.Nbd2 Qxb2 6.Bxf6 gxf6 7.Be2

4...b6?! 5.d5! exd5 6.Nc3 Bb7 7.Bxf6


5.Bd3


黒キングサイドを攻撃できる位置に展開。
キャスリング可能となる。


5...b6


Bc8 が b7、a6 に展開可能となる。
一方、黒クイーンが b6、a5 に行けなくなる。

Bb7 で a8 → h1 ラインを活用する狙い。


6.Nbd2


Nb1 を d2 に展開するのは 1.d4 系のオーニングでよくある。d2 に展開すれば
 c ポーンが前進する妨げにならない。

Nd2 を c4 に展開したり、Nf3 が e5 に行った後、Nd2 を f3 に展開する場合もある。e3 → e4 のサポートもできる。

6.0-0 や 6.c3 の変化もある。


6...Bb7


d5 にポーンがないため a8 → h1 ラインを活用できる。

白としては Bb7 の存在を常に意識しておきたい。


7.c3


d4 ポーンをサポート。d1 → a4 ラインが開かれる。

7...cxd4 の場合 8.cxd4 とできる。
キャスリングを急がないのが 1.d4 系の特徴の1つ。


7...Nc6


展開してない最後のマイナーピースを展開させる。

一時的に Bb7 の利きがブロックされるが、Nc6 が動いた場合、ディスカバードアタックがかかる時があるので白は注意したい。

ちなみに Nf6 が動いてもディスカバードアタックになる場合もあるため同様に注意されたし。

7.cxd4 exd4 または 7...cxd4


8.0-0


マイナーピースが全部展開したのでキャスリング。


8...0-0


黒も同様に。


9.a3


b2 → b4 とするためや、9...cxd4 10.cxd4 となった場合、...Nb4 で Bd3 が攻撃されることを防げる。

b3 のマスが Hole( 穴 )となるが現時点では Qd1 と Nd2 の利きが b3 に及んでいる。

Hole に関連した記事 → Weak Squares

9.Qe2 d5 10.Rad1 Qc7


9...cxd4


ポーン交換を迫る。c ファイルが開かれるので活用できる。

9...d5 10.b4 h6 11.Bh4 Ne4( ディスカバードアタック )


10.cxd4


オープン c ファイルとなり、メジャーピース( R と Q )の交換が起きやすい。

10.exd4
アンバランスな ポーンストラクチャーとなり面白いが、ハーフオープンファイル上の e6 ポーンはしっかり守られている。しかし黒 d ポーンが進んだ場合 e6 ポーンが弱くなるので f7 → f5 としづらくなる。
10.exd4 Nd5 11.Bxe7 Ncxd7 など

10.Nxd4?!
10...Nxd4 となれば白にとって何か得られたものはなく、それなら Nf3 を残して活用したい感じ。Bb7 の利きが開かれるので黒には悪くない。


10...Nd5


ビショップ交換を迫る。黒マスビショップの交換は白に都合が良さそうだが、現時点では Be7 が良い働きをしている訳でもない。

f7 → f5 とすれば黒は白マスを支配できる一方、黒マスは弱くなりがち、しかし白の黒マスビショップがなくなれば弱さが軽減される。


11.Bxe7 Qxe7 12.Rc1 f5 13.Re1 Rac8( 下図 )などと続く。


Nc6 が移動すればメジャーピース交換が起こる可能性が出てくる。
お互いポーンストラクチャーは悪くないため、ポーンストラクチャーが弱くなるような駒交換は避けたい。

f5 ポーンにより Bd3 は活用しづらくなった。一方 Bb7 は利きを通しやすい。

キングサイドでポーンを進めやすそうなのは黒だがセンターポーンがぶつかり合って固定されているわけではないため、キングサイドのポーンをすすめればキングの安全性に問題が出てきそう。


参考文献

Torre Attack - Wikidedia
The Torre attack: move by move - Richard Palliser
Opening Basics #38: Torre attack

コメント