Dutch Defence

ダッチディフェンス。1.d4 に対して好戦的な応手。e8 → h5 ラインが開かれるためキングの安全性に気をつけなければならないが、白のキングサイドに攻撃をもくろむ。

1.e4 に対して 1...c5 とする Sicilian Defence と似ているが状況は異なる。
ちなみに 1.c4 e5 は Reversed Sicilian と呼ばれる。

オランダのチェスマスター Elias Stein（ 1748 ～ 1812年）の著書で 1.d4 に 1...f5 が最善手とすすめられていることに由来している模様。

主な変化

1.d4 f5

2.g3 Nf6 3.Bg2 e6 4.Nf3

4...d5　Stonewall Variation
4...Be7 5.0-0 0-0 6.c4 d6　Classical Dutch

2.g3 Nf6 3.Bg2 g6　Leningrad Dutch

2.e4　Staunton Gambit
2.Bg5　Hopton Attack

1.d4 f5

白 e4 を妨げているように思えるが、2.e4 の Staunton Gambit は黒としては
厄介なので 1...e6 から f7 → f5 とするケースも多い（後述の補足にて）。

白が 2.e4 としてこなければ、Nf6 として e4 マスの活用が考えられる。

e8 → h5 ラインが開かれるため、キングの安全性に気をつけなければならない。

2.g3

Dutch Defence に対してよく指される。Bg2 と続けて
h1 → a8 ラインを活用する。

g3 にポーンがあることにより、後で f5 → f4 とポーンをぶつけられる
可能性あり。

白２手目は変化が多く、黒は対応が必要。
2.Nc3　　2.Bg5　　2.c4　　2.Nf3
2.f3　　2.h3　などもある。

2...Nf6

黒マスに置かれたナイトは白マスを支配している。
f5 ポーンも白マスを支配しており、白マスに対して
強い一方、黒マスに対して弱くなりやすい。

3.Bg2

白はビショップを先に展開。現時点では h1 → a8 の
ラインがよく開けている。

交換で Bg2 がなくなると、h3 と f3 のマスが弱くなる面もある。

フィアンケットしてきた相手のビショップの利きにより不利を招くことがあるため、フィアンケットビショップに対し警戒を忘れずに。

3...e6

f5 ポーンを守りつつ、d5 支配も強化、f8 → a3 ライン
だけでなく d8 → h4 ラインも開かれている。

f5 と e6 ポーンにより、Bc1 の活用が問題となる。

その後
d7 → d6 とする Classical Dutch と
d7 → d5 とする Stonewall Variation がある。

3...g6 とするのは Leningrad Dutch で黒も Bg7 とフィアンケット。h7 - g6 - f5 のポーン形が特徴的で sharp な局面になりつつも攻撃的な変化となる。

4.Nf3

自然な位置に展開。d4 ポーンとともに e5 を支配しているが、黒は d7 → d6 とすることができる。

4.c4 として黒の指し手を見てから Ng1 の展開位置を決めることもある。
4.c4 c6 5.Nf3 d5　or 4...d5 5.Nh3 c6

4.Nh3
h3 にナイトを展開するアイデアとしては

黒が Bd6 としてきた時、Bf4 としても Nh3 の利きがあるため ...Bxf4 となってもダブルポーンにならない。
Nh3 → Nf4 となった時、d5、e6、g6 を支配する好位置であること。黒が Ne4 としてきた時 f3 とできること、など。

4...d5

Stonewall Variation。e4 支配が強くなる一方、e5 が Hole（穴）となる。
有用な役割をはたすことが多い白 e2 → e4 を妨げる。

d5 ポーンにより Bg2 の利きがブロックされる。

e6 ポーンが Backward Pawn（後方にあってポーンで守れない）になったこと
も気づいておきたい。

5.c4

センターを支配している d5 ポーンに影響を与える。

黒が 5...dxc4?! とすると、h1 - a8 ラインが開き、e4 支配も弱くなる。

5...c6

d5 ポーンをガッチリ守る。d8 → a5 ラインが開いたので
白は気づいておきたい。

6.0-0

キャスリングを済ます。

6...Bd6

白 g3 ポーンがあるため、白キングサイドに攻撃しづらい位置だが
Hole となっている e5 を支配する。

白が 7.Bf4 として e5 を支配している Bd6 の交換を迫ってきても
7...Bxf4 8.gxf4 で問題ない。ただし sharp な変化となる。

7.Bg5 で Nf6 がピンされるが、0-0 後 Qd8 を動かせる。

7.b3

黒が 7...0-0 とすれば 8.Ba3 で黒マスビショップの交換ができる
黒の黒マスビショップがなくなれば e5 支配で白に有益。

黒が 7...Qe7 としてきた時は Bb2 + Qc1 から Ba3 で黒マスビショップの
交換も可能。

7.Qc2　　7.Nc3　　7.Bf4　　7.Bg5
など、白７手目は変化が多い。

7...Qe7

白が Ba3 で黒マスビショップの交換を迫ってくることを妨げる。

8.Bb2

d4 ポーンで Bb2 の利きはブロックされているが e5 支配に影響を及ぼしている。

Qc1 とすれば Ba3 で黒マスビショップの交換も考えられる。

8.Ne5 b6?! 9.cxd5! cxd5?! 10.Nc4!

8...b6

Stonewall で問題となる Bc1 を b7 や a6 に展開できるようになる。
c6 ポーンが Backward pawn となる。

8...0-0 9.Qc1 b5!? 10.Ne5 a5

9.Nbd2

Nf3 → Ne5　→　Nd3
Nd2　→　Nf3　として e5 支配を強めるアイデアがある。

9.Qc1 Bb7 10.Ba3 0-0 11.Bxd6 Qxd6

9...Bb7

c6 ポーンを守りつつ、a8 → h1 ラインに影響を及ぼす。
c4 に白ポーンがなくなれば Ba6 で a6 → f1 ラインの活用も考えられる。

キャスリングを急がないのが印象的。

10.Ne5

Hole となっている e5 に展開、Bb2 の利きが e5 に影響している。

Bg2 の利き（ h1 → a8 ）が開かれたのも黒として注意したい。

白が f2 → f4 として Ne5 を守ってきそうに思えるが
その場合 c6 → c5 で反撃できる。

10...0-0

やっとキャスリング。ここからどのような展開になるかまだちょっと
分かりづらい感じ。白は Nd2 をどのように使うか？　e2 ポーンが
まだ動いてないのも興味深い。

黒は Nf6 を e4 に展開したり、Nb1 は Nbd7 とは違った使い方もできる（後述）。
e6 と c6 の Backward pawn が気になる感じ。

11.Rc1 a5 12.Nd3 Na6!?　などと続く（下図）

白は e5 マスの活用、黒は Ne4 とすることも考えられるが
その場合 f2 → f3 で Ne4 を追いやることもできる。

現時点で気になるのは c4 と d5 のポーンテンション。
ビショップは白黒ともにまだ攻撃としては使いづらい。

黒 Na6 はボードの端の方にあり、良くない感じがするが
Na6 → Nb4 など Queenside で活用など。

補足

1.d4 e6

1.d4 f5 とすると　2.e4 の Staunton Gambit や　2.Bg5 の Hopton Attack
2.g4 Bayonet Gambit など、黒にとっては厄介な変化があるため
1.d4 e6 以降 ...f5 とする場合も多い。

ただ、1.d4 e6 とした場合、白が 2.e4 としてくると French Defence に
なるため黒として French Defence への対応も必要となる。

もし自分が白番であれば 1.d4 f5 に対し 2.e4 や 2.Bg5 を使うのは面白い。

1.d4 f5 2.e4　Staunton Gambit