Bird's Opening


バーズ オープニング。Bird と聞くと鳥を想像するが、英国のチェスプレイヤー Henry Edward Bird( 1830 ~ 1908年 )に由来している。彼は 1855年に 1.f4 を使い始め、以降 40年 使い続けた。1885年に Hereford Times という新聞が彼の名をとって Bird's Opening と名付けた。

ちなみに、1.e4 e5 2.Nf3 Nc6 3.Bb5 の Ruy Lopez で 3...Nd4 とするのを Bird's Defence と言い、やはり彼の名がついている。

1.f4 としてくるプレイヤーは少ないが、自分が黒番でその初手を指されると、どうしたら良いのだろう? と誰もが始めは思う。


主な変化


1.f4
1...d5 と 1...e5!?( From's Gambit )がよく知られる黒の応手だが

1...Nf6  1...c5  1...g6  1...b6!?  1...b5!?
1...f5  1...Nh6!?  1...e6

など、1手目からとにかく黒の変化が多い。
黒としてはどれか1つを選べば良いのだが、1.f4 となる機会は少なく、定跡を忘れやすいのが難点。


1.f4


Brid's opening で鍵となる e5 を支配、Nf3 と Bb2 などで e5 支配を活用する試み。

早期に e1 → h4 ラインが開かれるため、黒 Qh4+ などから不利を招いたり
メイトに至ることもあるため注意も必要となる。

1.f4 で 1...e5 を妨げているように思われるが、1...e5!? とする From's Gambit は黒の有効な対抗手段の1つ。

1.f4 は Flank opening の1つ。Flank は abc と fgh のファイルのことで( de はセンターファイル )、フランクオープニングは d と e ポーン以外の初手で始まるオープニング。


1...d5


データベース的には最も多い黒の応手。c4 と e4 を支配し Bc8 が展開可能となる。e5 のマスを d7 → d6 として支配することができなくなったため、白は e5 のマスを活用しやすい面もある。

1.f4 d5 は 1.d4 f5 と白黒の駒が入れ替わった形のため、1.d4 f5 の Dutch Defence を使うプレイヤーには対応しやすいかも知れない。

1...e5!? の From's Gambit は有効だが、白に 2.e4 とされると King's Gambit となるため、その対応が必要になる。


定跡で 1...d5 としてもその後 黒はどうしたら良いのか? 分かりづらい面がある。1...d5 に限らず黒の初手は多く、白プレイヤーは様々な変化への対応が問われるが、いろんな局面を学ぶことができるため、ためになり、面白さもある。


2.Nf3


f4 ポーンと共に e5 を支配、h4 も支配しているため Qh4+ を防ぐ。


2...g6


白には Bb2 として a1 → h8 ラインの活用や e5 支配をサポートしようとするアイデアがあるため、黒2手目で g7 → g6 から Bg7 とすることで 白 b2 → b3 を妨げる。ただ、白は Bb2 とできなくてもその場合の対処がある。


3.e3


f4 ポーンを守り d4 を支配、Bf1 が展開可能となる。

3.g3 は Bg2 とフィアンケットする変化で、Dutch Defence の Leningrad Dutch にちなみ Leningrad Bird と言われ人気がある。


3...Bg7


g7 → b2 ラインが開かれていて活用しやすい。


4.Be2


地味だが有効な場所に展開。


4...Nf6


キャスリング可能となる。Ne4 として e4 のマスを活用したいが、白は d2 → d3 とできる。

Bg7 の g7 → a1 ラインの利きがブロックされるが、この利きが開いた時に不利を招く可能性があるため、白はこの利きを忘れてはならない。


5.0-0 0-0


両者キャスリング。


6.d3


黒 Ne4 を妨げる、状況により e3 → e4 とするのをサポートする。

e2 → a6 ラインで Be2 の利きがブロックされる面もあり、白はスペースで窮屈な感じ。


6...c5


d4 を支配しセンターの攻防に参加、さらに Nc6 とすればセンター支配が増す。


7.Nc3


e4 にポーンを配置するための手。f6 にナイトがいない場合、この Nc3 の手は良くないらしい。

7.Qe1
定跡的によく指される手だが、この時点ではまだクイーンを動かさない方がいいらしい。

7.a4 でクイーンサイドにプレッシャーをかける変化もある。


7...d4


すぐ e3 → e4 となるのを防ぐ手。

7...Nc6 8.e4 or 8.Ne5
7...Bf5 8.Nh4


8.Ne4


c5 ポーンを攻撃し対応を迫る。8.Nxe4 dxe4 となれば 4th ランクに e4 f4 2つのポーンが並び e2 → a6 ラインも開かれる

8.exd4?! cxd4 9.Ne4 Nc6
黒のビショップの方がアクティブ


8...Nxe4


選択肢の1つ。白に好形をもたらすが互角の模様。
Bg7 の利きが開かれているので白は注意したい。

8...Nd5 9.Nxc5 Nxe3 10.Bxe3 dxe3 11.d4
8...Nfd7 9.Ng3 dxe3 10.c3 Qc7 11.Bxe3
8...b6? 9.Nxf6+ Bxf6 10.Nxd4! cxd4 11.Bf3 Nc6 12.Bxc6


9.dxe4


取る1手。d ファイルがハーフオープンファイルとなり 9...dxe3 10.Qxd8 Rxd8 となれば Queenless middlegame となる。


9...dxe3


d ファイル が オープンファイル となったため、メジャーピースの交換が起きやすい。このような局面にするのは残りのピースやポーンストラクチャーを考えた上で行いたい。

9...Qb6 10.exd4 cxd4 11.Bd3 Nc6 12.a3
9...Nc6 10.exd4 Nxd4 11.Nxd4 Qxd4+
9...e5 10.Nxe5 Bxe5 11.fxe5 Nc6


10.Qxd8


その後の局面を考え クイーン交換へ。
10.c3 とすると 10...Qb6 や 10...Qc7 でクイーン交換を避けられる( 悪い訳ではない )。

10...Rxd8 11.c3 b6 12.Bxe3 Bb7 13.e5 Nc6 などと続く( 下図 )



ポーンの数は同等で、両者ビショップペアが残っている状況。オープンファイルの支配で不利とならないように、大抵ルークの交換が起こる。見ため的には互角に感じられるが、白が良いとのこと。



補足


1.f4 e5


From's Gambit。定跡では 2.fxe5 d6 3.exd6 Bxd6 4.Nf3 などとなる( 下図 )。



黒はポーン1つ犠牲にしたが、両ビショップの利きが働いているのと、クイーンも展開できるようになっており、e1 → h4 ラインに対して弱い白にとっては厄介な変化。


1.f4 e5 2.e4


King's Gambit の局面。2.fxe5 として From's Gambit を受け入れるか、それとも King's Gambit にするのがいいか? 白としては迷う。King's Gambit の変化をほとんど知らなければ 2.fxe5 とするのが無難か?


1.f4 e5 2.fxe5 Nc6


Schlechter Gambit。3.Nf3 としたくなるが 3.Nf3?! g5! あるいは 3...d6 などから白にとって厳しい展開となる。この変化では 3.Nc3 とするのが良いらしい。
 

参考文献

Bird's opening - Timothy Taylor
Bird's Opening - Wikipedia 
The Bird Opening( Saint Emilions Home Page )
Chess Traps- Bird's Eye View

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