Larsen's Opening


ラーセンズ オープニング。オランダのグランドマスター Jørgen Bent Larsen( 1935 ~ 2010年 ) に由来している。

Bb2 でセンターやキングサイドに影響を与えていく。1.e4 や 1.d4 が多いため
1.b3 のような手は黒としてどう対処したら良いか始めは迷う。


主な変化


1.b3
1...e5 Modern Variation
1...d5 Classical Variation
1...Nf6 Indian Variation
1...c5 English Variation
1...b6 Symmetrical Variation
1...f5 Dutch Variation

1.Nf3 から 2.b3 とする変化もある。1.Nf3 d5 2.b3 は Nimzowitsch-Larsen Attack と呼ばれる。Nimzowitsch はナイトを先に展開させることを好んだ( 1.Nf3 とすると 1...e5 を妨げられる )。


1.b3


Larsen's opening。Bb2 としてセンターやキングサイドに影響を与えていく。
白黒ともに a1 → h8 ラインを考えて指していきたい。


1...e5


Modern Variation。2.Bb2 とされると e5 ポーンの守りを強いられるが問題なし。

1.Nf3 には 1...e5 とできないが( 2.Nxe5 )、1.b3 に 1...e5 とするのは妥当。

白としては 1...d5 より、a1 → h8 ラインをブロックされる 1...e5 の方が嫌な感じがする。しかし 1...e5 となるのは多いため、白も対応しやすい。

前述の通り、黒の初手はいろいろあるため、白は対応が必要になる。


2.Bb2


e5 ポーンを攻撃、黒に対応を迫る。

2.Nf3? e4 2.Nd4?! c5 3.Nb5 d5 or 3.Nf5?? Qf6

2.e4? については後述の補足にて。


2...Nc6


ピース展開しながら e5 ポーンを守る。
Nc6 が c7 ポーンの前進を妨げる面もある。

2...d6 3.d4 exd4 4.Qxd4( 3...f6? 4.e4 )


3.e3


f1 → a6 ラインと d1 → h5 ラインが開かれる。Bb5 として e5 ポーンを守っている Nc6 を攻撃する狙いがある。

3.e4 とした方がスペースを得られ良いような気がするが、2.e4? としなかったように、3.e4? Nf6 で e4 ポーンを攻撃されるのはよろしくない。

3.c4 とする変化もある。


3...d5


センターに2つのポーンを並べ、両ビショップの利きが開かれた好形となるが、4.Bb5 で Nc6 がピンされると e5 ポーンの守りが必要になる。

3...Nf6 4.Bb5 Bd6 5.Na3 a6 6.Bxc6


4.Bb5


e5 ポーンを守っている Nc6 を攻撃し、黒に対応を迫る。
Bxc6 となれば白はビショップペアでなくなるが戦える。


4...Bd6


ピースを展開し e5 ポーンを守る。

4...f6 5.d4 e4 6.c4 a6 7.Bxc6+ or 7.cxd5!?


5.f4


e5 ポーンにプレッシャーをかける積極的な手、Qh4+ とされるので注意は必要。


5...Qh4+


6.g3 で白は守れるが、g2 → g3 とすることで f3 - g2 - h3 の白マスが弱くなる( ポーンで守れないマス )。

5...f6 6.Qh5+ g6 7.Qh4 exf4 8.Nf3!
5...exf4?? 6.Bxg7 Qh4+ 7.Kf1 fxe3 8.dxe3


6.g3


6.Kf1 より 6.g3 とするのが良い模様。

このような局面は面白さがあるが、白キングの安全性などから、中級者以上向き。


6...Qe7


黒クイーンをどこに動かせば良いかだが、e5 ポーンに利きが及ぶ e7 へ後退する。


7.Nf3


e5 ポーンにさらなる攻撃で主導権を握る。
7...e4 や 7...exf4  7...Bg4 などの応手を考えつつ。


7...f6 


e5 ポーンに対し、白は3つの攻撃に加え、Bb5 が Nc6 を攻撃をしている。
e5 ポーンを黒は3つの駒で守っていたが Nc6 が消えると守りが1つ減るため
e5 ポーンの守りを考える必要がある。

f7 → f6 とする時に e8 → h5 ラインが開くことは注意したい( 白 Qh5+ が e5 マスの交換に影響を及ぼす可能性など )。

7...Bg4 8.fxe5 Bxe5 9.Bxe5 Bxf3 10.Qxf3 Qxe5
7...e4? 8.Bxg7 Bg4 9.Be2 exf3 10.Bxf3 f6 11.Bxh8


8.Nc3 


残りのマイナーピースを展開、d5 ポーンを攻撃し対応を迫る。8...Bg4 から e5 → e4 の脅威を考えつつ。

8.fxe5!? fxe5 9.Bxc6+! bxc6 10.Nxe5! Nf6 11.Nxc6 Qe4
( 9.Nxe5? Bxe5 10 Bxc6+ Kd8!! )

8.fxe5!? からの駒交換で白はポーン2つ得するが、黒のピースがアクティブで厳しい感じになる。

8.Qe2 Bg4 9.h3 Bxf3 10.Qxf3 e4


8...Be6


d5 ポーンをどう守るか?
e5 マスにおける駒交換も気になるが、Be6 で d5 ポーンを守り、0-0-0 も可能となる。定跡で覚えやすい手。

8...Qf7  8...Bg4  8...d4 の変化もある。


9.0-0


お互いにピースがまだ多く残っているため、白キングの安全性に不安があるが定跡的に大丈夫なよう。

黒キングは 0-0-0 可能だが、Bxc6 bxc6 となるのはキングの安全性に問題あり。黒キングとクイーンが同じファイル上にあるのも注意が必要。

9.Qe2 から 0-0-0 する変化もある。

9.fxe5 fxe5 10.d4 e4 11.Ne5 Bxe5


9...Nh6


0-0 可能となるが、10.e4  10.fxe5  10.d4 などの手を指されると、すぐキャスリングはできない。 

好位置にある白のナイトに比べ、黒のナイトは Bb5 にピンされているものと、ボードの端にあり、ナイトの働きは白が良さそう。


10.e4


候補手がいくつかあり、白としては迷うような局面。
10.fxe5 や 10.d4 に比べ 10.e4 は定跡でなければ指しづらい手。

10...d4 となれば Bb2 の a1 → h8 ラインの利きがブロックされ良くないように思えるが、11.Nd5 に対し 11...Bxd5?? とすると 12.exd5 でピンされている Nc6 が攻撃され黒にとって不利を招く。

そのため、黒は 11...Bxd5 とはできず、白はセンターの好位置にナイトをおける。

10...dxe4 では 11.Nxe4 0-0 以降、駒交換が起こりやすく、オープンな局面でシャープな変化となる。

10...d4 11.Nd5 Qd7 12.fxe5 fxe5 13.Ng5 Bg4 などと続く( 下図 )



オープン f ファイルがあるため黒は 0-0 しづらく 0-0-0 する模様。
14.Be2 Bxe2 15.Qxe2 となれば、黒には Bad Bishop が残る。

相手キングに攻撃を仕掛けていきづらいような状況。オープン f ファイルを活用しつつエンドゲームで勝負か?

白 Nd5 は好位置にあるが、後退しづらくなっているため注意が必要。駒損を避けながらピースを上手く使っていきたい。
 

補足


1.e4 e5 2.b3?


1.b3 2.e5 e4? も同じ。2...Nf6 で e4 ポーンを攻撃されると白は先手の利を
失う。
3.Nc3 Bb4  3.e3?! d5 4.exd5 Nxd5  3.Bb2?! Nxe4 4.Bxe5 Qe7
など。

ちなみに 1.e4 e6 2.b3 や 1.e4 c5 2.b3 は悪くない模様。


補足2


1.e4 b6 Owen's Defence


1.b3 e5 は 1.e4 b6 の局面が白黒入れかわった形。ただ先手後手が異なるため
1.e4 b6 2.d4 とすぐセンターポーンを並べることができるのに対し
1.b3 e5 2.Bb2 では 2...d5 とはできない( 2...Nc6 3.e3 d5 は可能 )。

Owen's Defence の記事は → こちら( リンク )


参考文献

The Nimzo-Larsen attack move by move - Cyrus Lakdawala
Larsen's Opening - Wikipedia
The Nimzo-Larsen Attack( lichess study )
1.b3 Nimzo Larsen Attack Repertoire (Basic Ideas)
GM Eugene Perelshteyn teaches you how to face 1.b3 Larsen's Opening
Dirty Chess Tricks 35 (Knock out the Nimzo-Larsen - 1)
The Kenilworthian: Bibliography on 2.b3 vs the Sicilian and the French

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