Sokolsky Openig


ソコースキー オープニング。Polish opening、Orangutan opening とも呼ばれる。ソビエト連邦のマスター Alexey Pavlovich Sokolsky( 1908 ~ 1969年 )に由来している。

オランウータンと呼ばれる由来。New York 1924 のトーナメントで Savielly Tartakower( 1887 ~ 1956年 )と Géza Maróczy( 1870 ~ 1951年)が対戦する前日、二人はニューヨーク市にあるブロンクス動物園を訪れた。そこで Tartakower はスーザンという名前のオランウータンに助言を求めると、Tartakower が 1.b4 を使うことに同意するかのようだった。また、b2 → b4 の動きはオランウータンが登る姿を思い出させた。


主な変化


1.b4 e5 2.Bb2 Bxb4 3.Bxe5 Nf6

1.b4 e5 2.Bb2 f6 3.e4 or 3.b5

黒 ...e5 and ...d6

Queen's Indian Systems( ...b6 )

黒 ...d5 and ...e6

黒 ...d5 and Bf5/Bg4

1...c6  1...f5

play 1 b4! Yury Lapshun and Nick Conticello
( 参考文献 )


1.b4


Sokolsky opening。クイーンサイドで行動を起こすためと、Bc1 を b2 に展開して活用する。

1.b3 と異なり、b4 ポーンは守られてないため、意味なく b4 ポーンを失わないよう気をつけたい。

黒に 1...e5 や 1...d5 あるいは d5 e5 2つのポーンをセンターに配置することを許すが、それは承知済み。

a7 → a5 で b4 ポーンを攻撃される可能性が出る。
b4 → b5 で Nc6 を妨げたり、追い払ったり
白 b ポーンと 黒 c ポーンを交換するアイデアもある。


1...e5 


センターにポーンを進めるとともに Bf8 が b4 ポーンを攻撃するので、黒番で初めて 1.b4 に遭遇したとき、最も指す可能性が高い手。しかし、その後の変化をあまり知らないプレイヤーは多いと思われる( 1.b4 となる機会は少ないため )。

黒 初手は
1...d5  1...Nf6  1...c6  1...e6  1...a5  1...d6  など様々。


2.Bb2


a1 → h8 ラインを活用する。
2...Bxb4 となっても 3.Bxe5 で白は駒損する訳ではなく、センターポーンを奪い、g7 ポーンを攻撃している。

Bb2 が e5 ポーンを攻撃しているため、黒は対応を問われる。


2...d6


e5 ポーンを守る自然な手。Bc8 が展開可能となる一方、f8 → a3 ラインがブロックされ Bf8 の展開が妨げられる。

d6 にポーンを配置した状況は g7 → g6 とすれば King's Indian Defence の形になるため、KID を使うプレイヤーに好まれるかも知れない。

白としては 黒 e5 ポーンが守られた状況になると、Bb2 の利きがブロックされやりづらくなる。b7 → g2 ラインが開いているので 黒に Bb7 とされる可能性もある。

2...Bxb4
データベース的には最も多い手。3.Bxe5 Nf6 などと続く。
これで白が有利になる訳ではないが、あまり見ないような局面となり、どちらにとっても指しづらい感じになる。

2...f6 については後述の補足にて。

2...Nc6?
3.b5 で e5 ポーンを失うことになる。


3.c4


キングサイドのピースを展開する前に c4 とするのはピース展開で遅れを取らないか心配になるが、黒もピースを展開してないので問題ない。

c4 ポーンでセンター d5 のマスを支配。クイーンサイドでスペースを得る。
c4 ポーンは b4 → b5 とした時に b5 ポーンをサポートする。白クイーンが展開可能となる、Qa4+ から不利を招かないよう黒は注意したい。


3...Nf6


自然なピース展開。

3...g6  3...a5  3...f5  3...Be6 の変化もある。


4.e3


f1 → a6 ラインと d1 → h5 ラインが開かれる。Bf1 の利きは c4 ポーンを守っており、b5 にポーンがある時も間接的に、あるいは直接守ることになる。

e3 ポーンが e4 と f4 を支配しているため、黒ピースがそのマスにくることを防いでいる。


4...g6


d6 ポーンで Bf8 の展開が妨げられているため、Bg7 とフィアンケットする。

消極的ではあるが、g7 → g6 とせず e7 に Bf8 を展開する場合もある。

黒がキングサイドにフィアンケットする戦い方に不慣れであれば、別の対処法を考えた方がいいかも知れない。


5.Nf3


キングサイドのナイトを展開。5...e4 とされる可能性があるが、黒が Bg7 から 0-0 する前に e5 → e4 とすることはまれのよう。

5...e4 には 6.Nd4 より 6.Ng5 が良い。
6.Ng5 Bg7? 7.Nxe4 Nxe4?? 8.Bxg7
6.Ng5 h6? 7.Nxe4 Nxe4?? 8.Bxh8
6.Ng5 には 6...Bf5


5...Bg7


e5 ポーンにより g7 → a1 ラインはブロックされているが、後で e5 → e4 など可能( 状況による )。


6.d4


e5 ポーンを攻撃し黒に対応を迫る積極的な手。
6...exd4 となれば a1 → h8 ラインが開く。

6...e4 が考えられるが、7.Nfd2 で問題ないようで、Nc3 とすれば 黒 e4 ポーンはプレッシャーを受け、白が良い模様。

6.d3  6.Nc3 の変化もある。


6...exd4


a1 → h8 ラインが開かれ、7.Nxd4 で白ナイトがセンターの好位置に展開するが ...c5 で反撃できる。

a1 → h8 ラインが開いた状況では Bb2 と Bb7 の利きに互いに注意が必要。

テンションを保つ 6...0-0 も可能で、7.dxe5 dxe5 8.Qxd8 Rxd8 9.Nxe5 Bf5
白はポーン1つ得するが展開で遅れをとっており互角。


7.Nxd4


どの駒で d4 ポーンを取るか?

ポーンがセンターに進むが、Bf1 が展開しておらず、e ファイルが開かれる 7.exd4 は良いとは思えない。また、ポーンを動かす場合は、ポーンを動かした後、そのポーンの安全性を考えるようにしたい。

ビショップ、ナイト、クイーンのいずれかで d4 ポーンを取った場合、7...c5  7...Nc6  7...Nh5 などの応手があるのでそれらを考えた上で 7.Nxd4。

注意したい変化
7.Bxd4 c5 8.bxc5? dxc5 9.Bxc5?? Qxd1+


7...0-0


キャスリングを済ます。白は Bb2 が守られてないため要注意。

7...Nc6 8.Nxc6 bxc6 9.Nd2 0-0

7...c5?! 8.bxc5?( 8.Nb5 が良い )


8.Be2


キャスリング可能となる。

8.Bd3?! c5 9.bxc5 dxc5 10.Nb3 Nc6 11.Nxc5?? Qa5+ 


8...c5


まだキャスリングしてない白に対し反撃。...cxb4 あるいは bxc5 いずれも白の a と c ポーンは孤立ポーンとなる、Nd4 が攻撃されているため 9.b5?? とはできない。

黒 d6 ポーンがバックワードポーンとなる面もある

8...Ne4 9.Nc3 Nxc3 10.Bxc3 c5 11.bxc5 dxc5 12.Nb5


9.Nb5


d6 ポーンを攻撃する積極的な手。Bb2 の利きが開かれる。
動いた駒や、攻撃されている駒に気をとらわれるが、その他の部分で不利を招かないか、局面全体を見るようにしたい。

9.Nc2 Nc6 10.b5 Na5
9.bxc5?! dxc5 10.Nb3 Qe7 11.0-0 Rd8


9...Nc6


...cxb4 を急がずピースを展開させる。

9...cxb4 10.a3 Nc6 11.Nxd6 Qe7

9...Ne8?! 10.Bxg7 Kxg7 11.bxc5 Qa5+ 12.Nd2 dxc5


10.a3


...Nxb4 を妨げる。

10.bxc5 dxc5 11.0-0 Be6

10.Nxd6 Nxb4 11.a3 Nc2+!? 12.Qxc2 Qxd6


10...cxb4


10...b6 で c5 ポーンを守るより良い。

10...b6?! 11.Bf3 Bd7 12.0-0 Rb8

10...Be6 11.Nxd6 cxb4 12.axb4 Nxb4


11.Nxd6 Qe7 12.Nxc8 Rfxc8 13.0-0 a5 などと続く( 下図 )



白もやっとキャスリング。白はキングサイド、黒はクイーンサイドでポーンマジョリティ。オープンな局面のため、白はビショップペアを活用したいが、黒は Nf6 → d7 などでビショップ交換を迫る模様。

c4 の孤立ポーンはハーフオープンファイル上にありポーン自体狙われやすくなるが、c4 ポーンを守るためにピースの動きも制限される。

ピース交換が起きやすい状況だが安易に駒交換せず活用したい。
強い人はピースの使い方が上手い。


補足


1.b4 e5 2.Bb2 f6


e5 ポーンを守るだけでなく、Bb2 が a1 → h8 ラインで黒のキングサイドに攻撃する効果が弱くなる。

一方、Ng8 が f6 に展開できなかったり、e8 → h5 ラインが開いたので Qh5+ に注意が必要。また、a2 → g8 ラインが弱くなる。

白は 3.e4 で b4 ポーンを差し出す Gambit がある。

3.b5 や 3.a3 では黒に 3...d5 とされる。

3.e4 Bxb4 4.Bc4 Ne7 5.Qh5+ Ng6 6.f4 exf4
3.b5 d5 4.e3 Be6 5.d4 e4 6.Nd2 c6 
など


参考文献

play 1 b4! - Yury Lapshun and Nick Conticello
Sokolsky Opening - Wikipedia
Understanding 1 b4 the Polish opening

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