Grob's Attack


グラブズ アタック。スイスの インターナショナル マスター
Henri Grob( 1904 ~ 1974年 )に由来している。

Flank opening だが、一般的には Irregular opening に分類されている。

自分が使わない限り、日々のゲームで相手(白)が使ってくることはめったにないが、いざ相手が使ってくると、上手く対処できない、ということが起きやすい。

定跡をある程度 覚えても、黒番ではめったに遭遇しないため、定跡を忘れやすい。ただチェスプレイヤーとしては、黒番でそれなりの対応ができるようにしたい。


主な変化


1.g4

1...d5
2.Bg2  2.h3  2.e4


1...e5
2.Bg2  2.h3  2.d3


1...c5
2.Bg2  2.Nc3  2.c4

黒1手目は他にもいろいろあるが、黒番としての対策なら、覚えやすいものをどれか1つ選べば良いだろう。


1.g4


Bg2 として h1 → a8 ラインを活用しようとするが、g3 ではなく g4 だと
0-0 しづらかったり、f4 と h4 のマスに弱くなる。

白は g4 ポーンを h3 で守ったり、黒に Bxg4 とさせてから c2 → c4 で 黒 d5 ポーンを攻撃したりする( 1.g4 d5 2.Bg2 の場合 )。

1.e4 や 1.d4 オープニングとは異なるゲーム展開となり、黒番ではめったに遭遇しないため、白の術中にはまりやすい。


1...c5


白が Bg2 としてくるので、...Nc6 として Bg2 の h1 → a8 ラインの攻撃に対処する。

c5 ポーンで センター d4 を支配、d8 → a5 ラインが開かれる。

1...d5 と 1...e5 は後述の補足にて。


2.Bg2


h1 → a8 ラインを活用する。

g4 ポーンは守られておらず、黒 d ポーンが動いた時 Bc8 で g4 ポーンが攻撃されるので注意したい。


2...Nc6 


センターに影響を与える好位置に展開。

Bg2 の h1 → a8 ラインの脅威を緩和する。

Bxc6 でダブルポーンができるが、白としては Bg2 を安易に交換せず活用したい。


3.c4


c4 ポーンと Bg2、さらに Nc3 でセンターの白マスを支配する。
1.c4 の English opening のような形。

黒としては g4 ポーンの存在が気になる。

3.e4 d6 4.Nc3 g6


3...g6


白と同じように、c5 ポーン、Bg7、Nc6 でセンターの黒マスを支配する。

白 h2 → h4 → h5 で g6 ポーンを攻撃される可能性がある。  


4.Nc3 Bg7


白 g4 ポーン、黒 g6 ポーンの違い。

ビショップの利きを有効に使いたいため、自分側のビショップの利きを安易にポーンでブロックしてしまわないよう気をつけたい。


5.d3 d6


両者クイーンサイドのビショップの利きを開く。
g4 ポーンは守られてないため対応を問われる。

d ポーンをサポートとして e ポーンを進めることが考えられる。


6.h3


g4 ポーンを守る無難な手。

6.e4 e5 7.h4 Nge7 8.h5 0-0
6.g5 e6 7.h4 h5 8.Bxc6+ bxc6


6...e5


センターの黒マスを支配。e7 のマスが空いたので Nge7 とできる。

Ng8 を f6 に展開すると f7 → f5 を妨げる。
e7 → e5 とすることで d5 のマスが Hole となる面もある。


7.Bd5!?


Nge7 で攻撃を受けるが、Hole となった d5 に展開。

Bd5 があると、黒は 0-0 後 f7 → f5 とすぐできない。


7...Nge7


この局面で自然な展開場所。

...Nxd5 となれば白はビショップペアでなくなるが、Nxd5 で取り返すと好位置のナイトになる。


8.Nf3


白は f3 にナイトを展開。0-0 可能となるが、黒が 0-0 する前に白が 0-0 すると、黒からキングサイドを攻められ困る可能性あり。


8...Nb4


Bd5 に思わぬ攻撃が加わる。

2つのナイトで d5 を 攻撃しているため、駒交換となった場合、d5 に白のナイトは残らない。


9.Bg5


9...f6 とされると白にテンポを与えるが、9.Be4 d5 10.cxd5 f5 11.gxf5 gxf5 はシャープな局面となる。


9...f6


Bg5 の後退を強いるため、Nxd5 のテンポを得られる。

Bg7 の利きがブロックされるが、f6 → f5 とできる。


10.Bd2


適切な場所に後退。

10.Bc1
b ポーンを守っているがメジャーピースの連結を妨げる。

10.Be3
e ポーンの前進を妨げる。

d2 に後退するなら 9.Bd2 でも良さそうだが?


10...Nbxd5


まだオープンな局面ではないが、将来的にオープンな局面になる可能性があるため、ビショップペアを保有している側は1つの利点となる( 局面による )。

10...Nexd5 は 11.cxd5 以降 Nb4 を a6 に後退することになる。 


11.cxd5


11.Nxd5
悪手というほどではないが、11...Nxd5 12.cxd5 でダブルポーンができるのは同じでも、単純化するような局面でもないため、ピースを残して活用したい。


11...a6


b7 → b5 の脅威があるため、白に対応を迫る。
白が黒のキングサイドを攻めやすい状況のため、黒は安易に 0-0 するのはキケン。 

12.a4 とすれば 白 b ポーンはバックワードポーンとなる。

11...b5! 12.Nxb5?! Nxd5

11...a6 12.a4 b6 13.e4 Bd7 14.Be3 h5! などとなる( 下図 )



ポーンが全て残っており、ごちゃごちゃした感じだが徐々に交換が起こる。

両者キャスリングしてないこのような展開は、中級者以上向きだが面白さはある。

まだオープンな局面になってないため、現時点では黒のビショップペアは効果を発揮できないが、黒の方が良いらしい。

ミスが起きやすそうなのでどちらも油断できないだろう。


補足1


1.g4 d5


黒の応じ手としては1番多い。Bc8 が g4 ポーンを攻撃しているが白は構わず 2.Bg2 とできる。


2.Bg2


2...Bxg4 
取ると何かありそうだが取ってみたくなる手。

2...c6
d5 ポーンを守り、Bg2 の効果を弱められるが、クイーンサイドのピースを展開しづらい。

2...e5
とりあえずセンターに2つのポーンを並べて、両ビショップの利きを開いておこう。と考えがちな手。その考え自体は全く問題ないが、g4 ポーンと Bg2 の存在により、白はミスをおかしやすい。


2...Bxg4 3.c4


Grob's Attack について知らなければ、3.c4 という手がくるのは予想しづらい。

3...dxc4?
すぐ c4 ポーンを取ってしまうと、4.Bxb7 で黒はルークを失う。
ただ、白もまだ油断できない状況。

3...c6 や 3...e6 で d5 ポーンを守ると、4.cxd5 から 4.Qb3 という手がくる。黒はまだ十分戦えるが、不慣れな局面的でミスをしたり、時間を多く消費しやすい。


補足2


1.g4 e5


定跡で 1...e5 とするプレイヤーもいるが、始めは 1.g4 に何を指して良いか分からず、1...e5 とするプレイヤーもいるだろう。

1...e5 で問題ないが、その後、どうしたら良いか分かっていなければ、Grob's Attack を得意とするプレイヤーに翻弄されやすい。


2.Bg2


この後 黒は

2...d5
センターに2つのポーンを並べる

2...h5 
g4 ポーンを攻撃する

などの手があるが

2...Ne7
Ne7 を g6 → h4 または f4 に運び、Bg2 を攻撃する
というアイデアもある。

いずれの場合も、そこからどうするか、経験が少なければ手こずる可能性は高い。


参考文献

beating unusual chess openings - Richard Palliser
Grob's Attack - Wikipedia
Beating the Grob Opening
Dirty chess tricks 9 (Grob's Attack)

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