Black Knights' Tango


ブラック ナイツ タンゴ。Mexican Defence、 Kevitz–Trajkovic Defence とも呼ばれる。このオープニングを使っていたプレイヤーの出身国や、氏名に ちなんだ名前がついていたが、インターナショナル マスターの Georgi Orlov が
" Black Knight's Tango " という小冊子を発行した時に この名前をつけた。

Tango の名前を最初につけたのは、モルドバ共和国でコーチをしていたことで有名な Vyacheslav Chebanenko( 1942 ~ 1997年 )らしい。

白 c4 d4 のポーン形に対し、黒は Nc6 Nf6 2つのナイトを展開させる。2つのナイトがあたかも黒衣装でタンゴを踊ることを連想させる。


主な変化


1.d4 Nf6 2.c4 Nc6

3.Nf3
3.Nc3
3.d5

他のオープニングに Transpose しやすい面もある。


1.d4 Nf6 2.c4 Nc6


Black Knights' Tango 。早期ピース展開を活かし、3...e5 あるいは
e7 → e6、 d7 → d5 で反撃していく。

3.d5 とされると Nc6 を再び動かさないとならないが、3...Ne5 で c4 ポーンが攻撃されるため、白は 3.Nf3 あるいは 3.Nc3 とすることが多い。


3.Nf3


Nf3 が e5 を支配しているので d4 → d5 が黒にとって脅威になるのと
e7 → e5 を妨げている。

3.Nc3
e2 → e4 の狙いが考えられるが、3...e5 という反撃を受ける。
3.Nc3 e5 4.d5 Ne7 5.e4 Ng6 など。

3.g3  3.Bf4 なども可能。


3...e6


d4 → d5 が脅威なので、e7 → e6 で d5 を支配、Bf8 の利きが開かれるため、...Bb4+ が可能となる。


4.a3


ピース展開が遅れるが、黒の Bb4+ を防ぐことは有効で、黒は対応を変えていかねばならない。

4.Nc3 Bb4 は Nimzo-Indian Defence に Transpose

4.g3 もよく指される。4...Bb4+ は Bogo-Indian Defence になるが、4...d5!? で Catalan opening にするのも良い。

4.d5 exd5 5.cxd5 Bb4+ 6.Nc3 Ne7


4...d6!


白 Ne5 を妨げる。スペースで白に劣るが、g7 → g6 から Bg7 として King's Indian Defence 形にする。

4...d5 も考えられるが、この形は 1.d4 d5 2.c4 Nc6 の Chigorin Defence 形となり、e6 ポーンにより Bc8 の展開がブロックされているのが好ましくない。4...d6! の場合は e6 → e5 とすることが可能。

4.g3 に 4...d5!? は良かったが、4.a3 に 4...d5 は良くないというのは不思議な感じもする。


5.Nc3


白はこの手を指してくることが多い。e2 → e4 を可能にする。


5...g6


黒マスビショップを g7 で活用することは良いが、e7 → e6 としているため、白 Bg5 で Nf6 をピンされるのは厄介に感じる。


6.e4


センターを支配し、Bc1 の展開を妨げない。白としては自然で
指しやすく感じるが、Bg7 の g7 → a1 の利きに注意したい。

6.g3 Bg7 7.Bg2 0-0 8.0-0 Re8 9.e4 e5
6.d5 Ne7 7.e4 Bg7 8.Be2 0-0 9.0-0 exd5
6.Bg5 h6 7.Bh4 g5 8.Bg3 g4 9.Ng1 Nh5


6...Bg7


KID の Classical Variation で 1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 Bg7 4.e4 d6 5.Nf3 0-0 6.Be2 e5 7.0-0 Nc6 という変化に似ている。


7.Be2


黒が g7 → g6 としている場合は Bd3 より Be2 とすることがよくある。

7.Bd3 0-0 8.0-0 e5 9.d5 Nd4!?
7.h3!? 0-0 8.Bg5!? h6 9.Be3 Re8

7.e5?? dxe5 8.dxe5 Qxd1+ 9.Nxd1 Nd7


7...0-0 8.0-0


互いにキャスリングを済ませる。
白が良さそうに見えるが、大きな差はない。

黒は Bc8 を活用させたい。


8...Re8!?


e7 → e5 に d4 → d5 ときたら Nd4 として、Nd4 が取られたら、exd4 で e ファイルが開くため、Re8 の利きが 白 e4 ポーンに及ぶ。

オープンファイルや ハーフオープン ファイル にルークを配置することがあるが、開きそうなファイルに ルークを配置することもある。


9.Be3


Bc1 が展開すれば、バックランクのルークを連結できる。
黒が e7 → e5 としてくる可能性があるため、Be3 で d4 支配を増す。

b2 ポーンの守りが外れたことは現時点では問題ない。


9...e5


Bc8 の利きが開く。d4 → d5 で白が良さそうに思えるが
10.d5 Nd4 で駒交換が起こる。

このような駒交換は、スペースで劣っていた黒に都合がいい。


10.d5


白としては 10.dxe5 で d ポーンがなくなるより、10.d5 で d ポーンを
残したい感じ。ただ 黒は 10...Nd4 で駒交換につなげられ、ここで Nc6 が役立つ。

10.dxe5 dxe5 11.Qxd8 Nxd8! 12.Nb5! Ne6


10...Nd4!


白が Nd4 を取れば ...exd4 で e ファイルが開かれるので 白 e4 ポーンを取れる。白は次手で Nd4 を取らない選択もある。

11.Re1!? Nxe2+ 12.Rxe2 Nh5 13.Ne1 f5! などと続く( 下図 )



King's Indian Defece でよくある f7 → f5 ブレイク。
白としては 14.exf5 としたくなるが、14.f3 が良い模様。
黒は f5 → f4 からさらに g6 → g5 → g4 でキングサイド攻めの狙いがある。


参考文献・動画

tango! a dynamic answer to 1d4 - Richard Palliser
Black Knights' Tango - Wikipedia
The Black Knights' Tango - Chess Openings Explained
Chess Openings: Knight's Tango Chess Opening to weaken dark squares - Nimzowitsch (Chessworld.net)

コメント