Budapest Gambit


ブダペスト ギャンビット。1896年 ハンガリーの首都 ブタペストで行われた Adler – Maróczy のゲームで知られるようになり、その後、ハンガリーのマスター達の貢献により発展した定跡。

現在はあまり使われない傾向にあるが、対処法を知らなければ黒の術中にはまる可能性あり。ただ、1.d4 Nf6 に 白が 2.Nf3 とした場合は使えないため、黒としても 2.Nf3 となった場合の対処が必要となる。 


主な変化


1.d4 Nf6 2.c4 e5 3.dxe5

3...Ng4 4.Nf3 Adler variation
3...Ng4 4.Bf4 Rubinstein variation
3...Ng4 4.e4  Alekhine variation

3...Ne4 Fajarowicz variation


1.d4 Nf6 2.c4 e5


Budapest Gambit 。3.dxe5 を誘い 3...Ng4 で 白 e5 ポーンに反撃、その後、...Bc5 で f2 ポーンにプレッシャーをかけ、...Nc6、...Bb4+、...Qe7 など、早いピース展開で攻撃的な手が続く( 変化による )。


3.dxe5


メインライン。白はポーン1つ得するが、黒は攻撃的な手を指してくるため、翻弄されないよう気をつけたい。

d ファイル と e ファイルが ハーフオープン ファイル となる。


Gambit に応じない手もある。

3.e3
黒にいくつかの選択を与える。
3...exd4  3...d6  3...Bb4+  3...Nc6  3...e4 など。

3.Nf3
白として指したくない感じの手だが、可能なよう。
3...e4 や 3...exd4 などとなる。

3.d5
d4 が Hole となり、3...Bc5 などとされる。


3...Ng4


e5 ポーンを攻撃することで白に対応を迫るとともに、f2 を攻撃しているため、...Bc5 が効果的なピース展開となる。

3...Ne4
Fajarowicz variation 。すぐに e5 ポーンを取り返そうとせず、積極的なピースの活用と タクティクスで有利を得ようとする狙いがある。相手の懐にもぐり込んだナイトは無防備な感じがするが、...Bb4+ などの脅威を与える。この変化を使うプレイヤーは少ないようだが、白としても不慣れな変化は厄介である。


4.Bf4


Rubinstein variation 。e2 → e3 とする前に Bc1 を展開して e5 ポーンを守り、Budapest rook と呼ばれる a7 → a5、Ra8 → a6 → h6 という攻撃に対し Bf4 がキングサイドの守りに使える。

4.Nf3
Adler variation 。定跡を知らなければ 4.Nf3 は自然に感じるが、4...Bc5 とされると 5.e3 を強いられ、その後 ...Nc6、 ...0-0 後に ...Re8 などで e5 ポーンを攻撃される。先程述べた Budapest rook による攻撃を受ける場合もある。

4.e4
Alekhine variation 。e5 ポーンの守りを放棄する代わりに、f2 → f4 でポーンによるセンター支配を増し、スペースの利を得ようとする。4.e4 Nxe5 5.f4 とするが、4.e4 h5 という手もあり、この場合 5.Be2 で Ng4 を攻撃するのが良い模様。

4.e3
4...Nxe5 に対し 5.Nh3 として Nh3 → f4 → d5 の狙いなどある。
黒が Ne5 → Ng6 で 白 Nf4 を防いできた場合は Qh5 と Ng5 でキングサイドに脅威を与える場合もある。


4...Nc6


e5 ポーンを攻撃しながらのピース展開、白に対応を迫る。

Nc6 が c7 ポーンの前進を妨げるが 4...c5? とすると 5.h3 Nh3 で ギャンビットした意味がなくなる。

4...g5 という攻撃的な手もある。
5.Bg3 Bg7 6.Nf3 Nc6 7.Nc3 Ngxe5
5.Bd2 Nxe5
などで 黒は ポーンを取り返せるが、シャープな局面になりやすい。


5.Nf3


e5 ポーンを守る自然な手。


5...Bb4+


チェックがかかり、白に守りを強いる効果的なピース展開。

Bf8 を展開した後 Qe7 で e5 ポーンを攻撃できる。


6.Nbd2


6.Nc3 Bxc3 7.bxc3 でダブルポーンができることを避けられるが、6.Nbd2 Qe7 から黒はポーンを取り返せる。

6.Nc3 Bxc3+ 7.bxc3 Qe7 8.Qd5 f6 

6.Bd2? Bc5 7.e3 0-0 で白はよろしくない。


6...Qe7


e5 ポーンを取れる機会を失わないようにする。


7.e3


e5 ポーンをさらに守ることはできないため、Bf1 を展開可能にさせ 0-0 の準備。

7.a3
黒に Bxd2 を強いるが、7...Ngxe5 または 7...Ncxe5 という手が可能なため白は注意したい。
7.a3 Ngxe5 8.axb4?? Nd3#

7.g3?! Qc5 8.e3 Ngxe5


7...Ngxe5


ポーンを取り返す。ポーンを取り返した黒が良いという訳でもなく、c4 e3 ポーンでセンターを支配している白に対し、黒は戦いづらい感じもする。


8.Nxe5


白に Nxf3+ とされる前に交換しておく。

8.Be2 Nxf3+ 9.Bxf3 Ne5 10.Be2 0-0


8...Nxe5


ダブルポーンを避けたいので黒も交換する。


9.Be2


0-0 の準備。


9...0-0


9...d6  9...b6 の変化もある。

9...d6 10.0-0 0-0 11.Nb3 b6
9...b6 10.0-0 Bxd2 11.Qxd2 Bb7


10.0-0


ミドルゲームに入っていく。
白はナイトを活用したいので、黒に Bxd2 とされる前に Nd2 → b3 とする選択がある。

黒は Bxd2 とすることが可能だが、ビショップペアを放棄することになる。
Bxd2 としない場合、Nd2 → Nb3 となった時、a3 から c5 が脅威となるため注意したい。

Bc8 は d7 → d6 で利きが開いたり、b7 → b6 から Bb7 で活用が考えられる。
白にビショップペアが残っているうちは、黒のナイトは活用しづらい感じ。

黒10手目は
10...Bxd2  10...Ng6  10...a5  10...d6
などの手がある。

10...Ng6! 11.Bg3 Bd6! 12.Bxd6 Qxd6 などと続く( 下図 )



互いにビショップペアでなくなり、戦いやすくなった感じはするが、攻撃できそうなポーンがなく、どのような戦略を取れば良いだろうか? 
→ 定跡や マスターのゲームを見て学ぶ。

白はキングサイド、黒はクイーンサイドで ポーン マジョリィティ。
黒は Bc8 の展開が遅れているため、Bc8 の展開と、どこで使うか。

互いにキングサイドを攻撃しやすいが、マイナーピースの数が少ない。
センターは開いていて、キングサイドのポーンを進めての攻撃もしづらい。

安易にポーンを進め、エンドゲームで弱点となることに気をつけたい。



補足


1.d4 e5


Englund Gambit 。1.d4 を使っているとネットでは時々遭遇する。白 d4 ポーンに e7 → e5 で Gambit するのは Budapest Gambit に似ている。

2.dxe5 で問題ないが

2...Nc6 3.Nf3 Qe7 メインライン
2...d6 3.exd6 Bxd6 4.Nf3 Nf6
2...Nc6 3.Nf3 f6 
2...Nc6 3.Nf3 Nge7

など、白にとっては不慣れな展開になることが多く、厄介。
2.dxe5 としない選択もあるため、白番で 1.d4 とするなら
Englund Gambit にどう対処すべきか考えておきたい。
 

1.Nf3 d5 2.e4


Tennison Gambit 。1.e4 d5 の Scandinavian Dfence に 2.Nf3 としてもこの局面になる。


2...dxe4 3.Ng5


この局面が Budapest Gambit に似ている。

3...Nf6?! は疑問手のようで
3...Nf6?! 4.Bc4 e6 5.Nc3 a6 などと続く。

3...e5! 4.Nxe4 f5! で黒が良いようだが、定跡を知っているかどうか。


参考文献・動画

the Budapest gambit - Timothy Taylor
Budapest Gambit - Wikipedia
Englund Gambit - Wikipedia
Tennison Gambit - Wikipedia
Play the Budapest Gambit! - Simon Williams
Most Attacking Chess Game-2 (Budapest Gambit)
Crush Your Opponents With The Evil Budapest Gambit - PROchess League

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