English Defence


イングリッシュ ディフェンス。Leicester( レスター。イングランド・レスターシャー州の単一自治体 )の チェスプレイヤー P.N. Wallis により発展し
その後、Tony Miles、Jon Speelman、Raymond Keene などの英国 一流プレイヤー に使われた定跡。

白がポーンでセンターを支配することに対し、Bb7、 Bb4、 Qh4、 f7 → f5
などで反撃していく黒の定跡。



主な変化


1.d4 e6 2.c4 b6

3.e4 Bb7
4.Nc3  4.Bd3  4.d5  4.f3  4.Qc2

白の変化が多い。

1.c4 に 1...b6 は良いが
1.d4 に 1...b6 とすると 2.e4 で黒側は Owen's Defence になる。

1.Nf3 に 1...b6 や 1...e6 として English Defence に持っていく場合もある。



1.d4 e6


1.d4 には 1...Nf6 や 1...d5 が多く、1...e6 とすると
黒が何をしてくるか白はハッキリとは分からない。

2.c4 Nf6 なら Nimzo-Indian Defence、Bogo-Indian Defence の可能性

2.c4 d5 なら Queen's Gambit Declined
2.c4 Bb4+ という手もある

2.Nf3 には 2...Nf6 や 2...c5 とでき
2.Nf3 f5 では Dutch Defence になる。

1.d4 f5 の Dutch Defence は 2.e4 Staunton Gambit が厄介な変化のため、その変化を避けるため、1.d4 e6 から Dutch Defence に持っていく場合がある。

1.d4 に 1...e6 を使うプレイヤーは何故その手を使うのか理由を持っている。


2.c4


1.d4 とするプレイヤーは 2.c4 や 2.Nf3 とすることが多い。

c2 → c4 とすると、Bb4+ とされた時は c2 → c3 とすることはできなくなる。ただし、d4 c4 ポーンでセンターを支配し、スペースを得られる。

2.e4 French Defence になる可能性もある。
1.d4 とした白プレイヤーが French Defence をあまり知らなければ、2.e4 とする可能性は低いが、1.d4 に 1...e6 とする黒プレイヤーは、French Defence になった場合の対処が必要。


2...b6


English Defence。2...Nf6 や 2...f5 に比べ、2...b6 とするプレイヤーは少ないが、慣れない変化になるため、白は気をつけたい。

b6 から Bb7 として センターと白のキングサイドにプレッシャーを与え、Bb4+、 Qh4、 f7 → f5 などの手を使い反撃する。

Queen's Indian Defence に似ているが、黒は Nf6 としてないため、Qd8 → Qh4 や f7 → f5 とできるところが QID とは異なっている。


3.e4


English Defence の典型的な局面。
3つのポーンでセンター支配、スペースを得られる。

黒が 3...Bb7 としてくる可能性が高いが 
4.Bd3  4.Nc3  4.f3  4.Qc2  

などの手で対処できる。

白としては 3.a3  3.Nc3  3.Nf3 などの手も使える。
3.d5 Nf6 4.a3 Ba6! 5.b3 Bd6!


3...Bb7


ナイトよりビショップが先に展開する面白い局面。
この時点で白は脅威を感じないだろうが、徐々に油断できなくなってくる。

e4 ポーンが攻撃されているため、白は対応を迫られる。


4.Bd3


4.Nc3 としたくなるが、4...Bb4 とされるため、4.Bd3 とすることが多い模様。

Bd3 で e4 ポーンを守っているが、g2 ポーンの守りが外れたため、f7 → f5 とされる可能性あり。

白4手目に、黒は異なる対応が必要。
4.Nc3 Bb4 5.Bd3 f5 or 5.f3 f5!
4.Qc2 Qh4 5.Nd2 Bb4 6.Bd3 f5
4.f3 Bb4+ 5.Bd2 Bxd2+ 6.Qxd2 Nh6   
4.d5 Bb4+ 5.Bd2 Qe7 6.Bxb4 Qxb4+


4...Nc6!?


Bb7 の利きをブロックするが、d4 ポーンを攻撃し、白が 5.Nf3 または 5.Ne2 としてきたら 5...Nb4 で Bd3 の交換を強いる。

この辺りから白は「 あれっ? 」というようなことになりがちなので気をつけたい。

4...f5 5.exf5 Bxg2 6.Qh5+ g6 7.fxg6 Bg7
シャープな変化となる。

4...Bb4+ 5.Bd2 Bxd2+ 6.Nxd2 d6 7.Ne2 Ne7


5.Ne2


Nf3 だと f ポーンをすすめることができない。

5.d5 Ne5 6.Be2 Qh4 7.Qc2 f5 8.Nc3 Bb4
黒に主導権を握られている感じ。


5...Nb4


Bb7 の利きが開かれ、白をビショップペアでなくさせる。


6.Nbc3


Bd3 の交換は避けられないため、Nb1 を好位置に展開させる。


6...Nxd3+


ピース展開で遅れを取るが、白をビショップペアでなくさせるのは有効。
ただ、駒が多く残っており、黒有利という訳でもない。


7.Qxd3


白は取るしかない。
黒は次に何を指せば良いか? 迷いそうな局面。

定跡としては
7...d6  7...Ne7  7...g6  7...Bb4 など。


7...d6


白がビショップペアでなくなり、黒もナイトが1つ消えたため、戦い方が変わってくる。

7...d6 とするのはピースを展開しておらず、消極的な手に思えるが
6th ランクにポーンを配置し、さらに g7 → g6 から Bg7 とすると
Hippopotamus ( カバ。ヒパ パダマス )Defence という黒の定跡になり
あとでジワジワ反撃が始まる。

d6 にポーンがあると Bf8 の展開を妨げるが、Bf8 は g7 に展開できる。

白が d4 → d5 としてきた場合、d6 ポーンが e5 c5 を支配しているのが役立ってくる。d7→ d6 で d7 のマスが空くので Qd7 とできるようになる。


8.0-0


白はセンターを支配し、良い感じピース展開が進んだ。
低く構えた黒の陣形に手こずるとは、思いもよらないだろう。


8...Ne7


白が f2 → f4 としてくることが考えられるので、g7 → g6 と協力して f5 を支配する。

f6 にナイトがいなければ g7 → a1 ラインで Bg7 の利きが有効となる。
状況によっては Ne7 → g6 とする場合もある。


9.d5


キャスリングを済ました白は、攻撃的な手を指しやすい。
d5 でポーン交換となれば d5 に白ポーンが残るため Bb7 の効力を抑えられる。d4 のマスが空くため、Nd4 とできる。

白側のビショップは黒マスビショップのため、センターで白マスにポーンを配置するのは都合がいい。


9...Qd7


9...g6 としたくなるが定跡では 9...Qd7 が多く、0-0-0 の可能性が高くなる。

9...g6 10.Be3 Bg7 11.f4 0-0 12.Ng3 Qd7
9...Ng6 10.Nd4 Qd7 11.dxe6 fxe6 12.Qh3 Bc8


10.f4


スペースで有利を得ている白は、安易にピース交換すれば、黒へのプレッシャーが減るため、不要な駒交換を避け、さらにスペースを得ていく。

黒としては厳しい感じがするが、まだ十分戦える。


10...g6


11.Qd4 とされると困る感じがするが、黒は 0-0-0 できるため、11.Qd4 Rg8 で大丈夫。

Bg7 とできるようになり、f5 も支配できる。黒が f4 → f5 と
してきた場合は ...gxf5 で g ファイルが開かれるため白は注意したい。


11.Nd4


f5 だけでなく、e6 c6 を支配している Nd4 は良い働きをしている。

e6 ポーンの守りが外れるため、黒は 11...f5 とできない。
c6 も支配している 白 d5 ポーンが黒にとっては厄介。

11.Be3 Bg7 12.Bd4 e5 13.fxe5 dxe5
11.f5!? gxf5 12.Ng3 Ng6! 13.exf5 Ne5


11...0-0-0


やっとキャスリング。スペースで劣っている黒はピースを活用させずらいが、センターで反撃を行っていく。


12.b4 Bg7


白はクイーンサイドでポーンを進め攻撃しやすい。
黒は ...Bxd4 とすれば f7 → f5 が可能になる。

マスター向きの定跡かも知れないが、不利に見える状況から徐々に反撃していく方法はためになる。



補足


1.d4 e6 2.Nf3


2...b6 としたくなるが、白が c2 → c4 としていないと
Bb4+ とした場合に c2 → c3 とされたり

Nf3 がいると、Qh4 とできなくなるため、English Defence 特有の攻め方ができなくなる。

黒としては 2.Nf3 にどう対処していくか?
ある程度 決めておきたい。



参考文献・動画

1...b6 move by move - Cyrus Lakdawala
English Defence - Wikipedia
The English Defence - James Plaskett
The Complete English Defense - Simon Williams( chess.com )

コメント

hitsujyun さんの投稿…
Libelle64 さん
コメントありがとうございます。時々アマゾンでチェスの本をチェックしてますので、「 定跡が秘めた狙い 」の本は私も確認していました。和書でオープニングの本が出版されたことはチェスファンにとって朗報ですね。

dell の即納モデルを注文したため、新しいノートパソコンをもう使ってます。いくつかのデータを失いましたが、また作り直してます。

現在 Hippopotamus Defence の記事を作成中です。脳内チェス トレーニング方法の英語版や、YouTube 動画の作成をするため、オープニング入門の記事はひとまず終了になります。いつも見ていただきありがとうございます。

1つの動画を作るのに時間がかかりますが、動画編集などは面白いです。Bandicam という画面キャプチャソフトを使うと、簡単にゲームの動画を録画できるため、ゲームについて実況するだけなら、誰でも自分のゲームなどについての実況動画を YouTube にアップロードできるため、将来的に日本人のユーチューバーは増えていくと思われます^^