Réti Opening


レティ オープニング。チェコスロバキアのグランドマスター 
Richard Selig Réti( 1889 ~ 1929年 )に由来している。

1924年 ニューヨークのチェストーナメントで世界チャンピオンの
José Raúl Capablanca( 1888 ~ 1942年 )にこのオープニングを使い勝つ。Capablanka にとっては8年ぶりの敗北だった。

Richard Reti vs Jose Raul Capablanca( New York 1924 ) chessgames.com


白のプランはセンターをフランク( a ~ c and f ~ h  ファイル )から攻撃すること。

他のオープニングに transpose しやすく、それらの局面についても知っておく必要が出てくる。


主な変化


1.Nf3 d5 2.c4

2...e6 3.g3 Nf6 4.Bg2
4...Be7
4...dxc4( あるいは 3...dxc4 )

2...c6
2...dxc4
2...d4

黒が ...c5 としてくれば Symmetrical English の変化になることもある。


1.Nf3
1...Nf6  1...d5  1...f5  1...g6  1...d6  1...Nc6

黒1手目の変化は多い。


1.Nf3


Zukertort opening と呼ばれる。この時点では白が何をするか分からず、黒の指し手を見ながら対応する柔軟性がある。

1.e4 オープニングより、1.d4 や 1.c4 からの局面になりやすいため
1.e4 プレイヤーは安易に使わない方が良い( 不慣れな変化になりやすいため )。


1...d5


センターにポーンを進める無難な手。c8 → h3 ラインと e8 → a4 ラインが開く。

データベースでは 1...Nf6 の方が多いが、1...Nf6 からの指し方を知らなければ 1...d5 とすることが多い。

1...e5 とはできず、かと言って 1...d5 とするのは 1.e4 プレイヤーにとって抵抗があるかも知れない( 1.d4 オープニングが苦手なら )。

1...e6 には 2.g3 として King's Indian Attack の形に持っていくこともできる。KIA の記事はこちら(リンク)。


2.c4


Réti Opening。この定跡を知らなければ、何だこれ? と始めは思うかも。

2...dxc4 で駒損するように思えるが、1.d4 d5 2.c4 の Queen's Gambit のように、2...dxc4 となっても、3.Qa4+ や 3.Na3 などからポーンを取り返すことができる。

白はフランクからセンターを攻撃する狙いがある。

2.c4 は黒に選択を与える。
2...e6  d5 ポーンを守る
2...c6  d5 ポーンを守る
2...dxc4  ポーン交換する
2...d4  ポーンを進める

他にも 2...Nf6  2...c5 などの手もある。

2.b3 とすれば Nimzowitsch-Larsen Attack となる。


2...e6


e6 ポーンで Bc8 の利きがブロックされるが、Bf8 が展開可能となる。

2...c6
d5 ポーンを守り、Qa4+ も防ぐ。3.cxd5 cxd5 から 4.d4 とすると Slav Defence の Exchange Variation になる。

黒は2手目に何を指すかの選択がある、一方、白は黒の2手目にそれぞれ対処しなければならない。


3.g3


Bg2 として、センターをフランクから攻撃できるようにする。場合によっては Bb2 とダブルフィアンケットすることもある。

3.cxd5 exd5 では、e6 ポーンがなくなったことにより、Bc8 が展開しやすくなるため、白としては避けたい感じがする手。

3.d4 から g2 → g3、Bg2 とすると Catalan Opening となる。


3...Nf6


自然なピース展開。

3...dxc4 4.Qa4+ Nd7 5.Bg2 Ngf6 6.Qxc4


4.Bg2


d2 → d4 としてない所が特徴の1つ。Réti Opening では d2 → d4 とするか? するならいつするか? というのが1つのテーマらしい。


4...Be7


白が g2 → g3 としているため、d6 ではなく e7 に展開する。

4...dxc4  4...c5  4...c6  4...d4  4.Nbd7
など黒4手目の変化は多い。  


5.0-0


早々にキャスリングを済ます。

黒 d5 e6 のセンターポーンに比べ、白はまだ d e ポーンを動かしてないのが興味深い。


5...0-0


黒もキャスリング。定跡を知らなければ、ここからどうしたものか? といったところ。

白はとりあえず c4 ポーンを守り、黒がどう応じてくるか見る。Bb2 でセンターと黒のキングサイドに影響を及ぼす、など。白の白マスビショップは黒のキングサイドを攻撃する位置ではないため、センターとクイーンサイドの攻防になるか?

一方、黒は c4 d5 のポーンテンションをどうするか? e6 にポーンがあるうちは b7 → b6 から Bb7、c7 → c5 など考えられ、白の動きを見ながらクイーンサイドで行動可能か? 白 Bg2 への警戒を忘れないようにしたい( c7 → c6 が堅実? )。


6.b3


c4 ポーンを守り、Bb2 とする。

フィアンケットする場合は、a1 - h8、a8 - h1 の対角線がポーンでブロックされてないか? あるいは、相手ポーンにブロックされないか? 事前確認。

フィアンケットした後に対角線を自らポーンでブロックして、フィアンケットビショップの効果を弱めてしまう場合もあるため注意したい。

6.d3 でも c4 ポーンを守れるが、a1 → h8 ラインを見ると、b3 から Bb2 とするのが効果的。

6.b3 dxc4 7.bxc4 となると、孤立 a ポーンができるが、センターの d5 ポーンがなくなることは、センター支配に影響が出てくる。


6...c5


b4 と d4 を支配、Nb8 は c6 または d7 どちらにも展開可能。

d5 → d4 とすると a1 → h8 ラインがブロックされるが、そうすると h1 → a8 ラインが開くため、黒は注意したい。

先に 6...b6 とすることも可能。
6...b6 7.Bb2 Bb7 8.e3 c5


7.Bb2


a1 → h8 ラインで活用する。
Bb2 は他の駒に守られてないのを意識しておきたい。

7...d4 とされた場合は
7...d4 8.e3 Nc6 9.exd4 cxd4 10.Re1 などとなる。


7...Nc6


3つのポーンと2つのナイトで黒はセンターを支配している。一方、白は1つのポーンと1つのビショップ、ナイトでセンターを支配。

現時点では、ナイトは黒の方が活躍しているが、ビショップは白の方がアクティブ( 活動的 )。


8.e3


黒が d5 → d4 としてくることが考えられるため、e3 ポーンで d4 を支配。

d2 → d4 とすることも考えられるが、Bb2 の利きがブロックされるため、安易に d2 → d4 としたくない。

また、Nb1 をどうしたら良いか?

黒 e6 ポーンがあるため、黒は Bg4 とできないが、白がキングサイドにフィアンケットしている場合、e2 → e3 とすることで Nf3 が 黒の Bg4 にピンされないか注意はしたい。


8...b6


c5 ポーンを守り、Bb7 とする。Bc8 は a6 に展開することも可能。

b7 → b6 とすることで Nc6 の守りがなくなるため、不利を招かないか注意しながら。

8...d4  8...dxc4 などの変化もある。 


9.Nc3


ようやく Nb1 を展開、センター支配に影響を及ぼす。
Nc3 が Bb2 の利きをブロックしている。

ここまでは定跡で覚えやすいが、ここからピースをどう使っていくか? ポーンはどうするか? など定跡を参考にしながら覚えていきたい。定跡を覚えてなかったり、定跡を外れても、その局面ごとに考える必要はあるが。

9.Qe2 Bb7 10.d3 Qc7


9...Bb7 


黒もクイーンサイドでフィアンケット。

センターの攻防、ビショップの利きに注意、クイーンをどう使うか?

...dxc4 bxc4 となると、白は孤立 a ポーン、バックワード d ポーンができるので対処が必要。


10.cxd5


...dxc4 とされる前に白から d5 ポーンを取る。

10.Qe2 Rc8 11.Rfd1 Qc7
10.d3 Qd7 11.Qe2 Rad8


10...Nxd5


ナイト交換になれば Bb2 の利きが黒のキングサイドに及ぶが 10...exd5 より良い模様。

10...exd5 11.d4 その後の変化はいろいろある。

11.Nxd5 Qxd5 12.d4 Rfd8 13.Ne5 Qd6 などと続く( 下図 )



c5 d4 のポーンテンション、駒交換が起きやすい局面、両者ビショップペア保有。ミスが駒損につながりやすそうなので注意したい。

14.Nxc6 から駒交換していくと、ドローになりやすい局面になる。

14.Qf3 とすると白のクイーンと黒の2つのルークを交換する変化がある。


参考文献


the dynamic reti - Nigel Davies
Réti Opening - Wikipedia
Zukertort Opening - Wikipedia
Understanding The Reti A12
Reti Opening-Benoni Reversed( 皇帝の正しくないチェス )

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