Grünfeld Defence


グルンフェルド ディフェンス。オーストリアのグランドマスター 
Ernst Franz Grünfeld( 1893 ~ 1962年 )に由来した定跡。

白 d4 c4 のポーン形に対し、キングサイドにフィアンケットするのは
King's Indian Defence と同じだが、Grünfeld Defence は d7 ポーンを d5 に進め( KID は d6 )、早期にセンター へ働きかける。

メインラインの Exchange Variation はオープンな局面となり、センターで攻防が起こる。


主な変化


1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3 d5

4.cxd5 Nxd5 5.e4 Exchange Variation

4.Nf3 Bg7 5.Qb3 Russian System

4.Nf3 Bg7 5.Bg5 Taimanov's Variation

4.Nf3 Bg7 5.e3 Slow System

4.Bf4 Bg7 5.e3 0-0 Grünfeld Gambit
5...c5 の変化もある

3.g3 d5 Neo-Grünfeld Defence


1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nc3


白は e2 → e4 としてセンター支配を増やす狙い。

それに対し 2...g6 とした黒は 3...Bg7 から d7 → d6 とする King's Indian Defence とするか、3...d5 で すぐセンターに働きかけるか。

3.g3  3.f3  3.Nf3 の変化もある( 後述の補足にて )


3...d5


Grünfeld Defence。センターにポーンを進め、白に対応を迫る。

c8 → a3 ラインと e8 → a4 ラインが開かれる。

メインラインは 4.cxd5 とする Exchange variation。
他に、4.Nf3  4.Bf4  4.Bg5 などの変化がある。

g7 → g6 として、Bg7 とする前に d7 → d5 とするのが特徴的。g7 → g6 とする前の 1.d4 Nf6 2.c4 d5?! も良さそうに思うがこちらは Marshall Defence と呼ばれ、疑問手とされている( 後述の補足にて )。


4.cxd5


d5 ポーンがなくなるため、4...Nxd5 の後 5.e4 とできる。

ただ黒もそれは承知済で、その後のことを考えている。 

白は c ファイル、黒は d ファイルが ハーフオープンファイルとなる。
黒 d5 ポーンが無くなった影響だけでなく、白 c4 ポーンが無くなった影響についても考える意識を持ちたい。


4...Nxd5


5.e4 とされるとしても、すぐに取り返す必要がある。

Bg7 としてない状況は、何だか不安を感じるが、f6 にナイトがいなければ Bg7 とした時に h8 → a1 ラインで威力を発揮する。


5.e4


Nd5 を攻撃し、センターに2つのポーンを並べることができる。両ビショップの利きも開かれ白は好形。

ただ黒の次手で、白にも問題が起きてくる。

5.Bd2 は 5...Nxc3 となった時 6.Bxc3 とできるため、白の a ポーンが孤立ポーンになるのと、バックワード c ポーンができるのを避けることができる。

5.g3 や 5.Na4 の変化もある。


5...Nxc3


6.bxc3 で白に孤立 a ポーンと バックワード c ポーンができる。


6.bxc3


白はポーンでセンターを支配しスペースを得ているが、孤立 a ポーン、バックワード c ポーンの弱さもある。

ピースを展開しやすい感じの白に対し、黒はどのように攻めていけば良いか、一見分かりづらいが、Bg7 c7 → c5 Nc6 などで、白 d4 ポーンを攻めていく。


6...Bg7


まずはフィアンケットし、Bg7 を活用する。
黒は Qa4+ とされる影響を忘れないようにしたい。

白 d4 ポーンは c3 ポーンに守られているが、c7 → c5 とされると問題が出てくる。

白が e4 → e5 とすることが考えられるが、まずはピースを展開させるため 7.e5 となることはめったにない模様( 7.e5 c5 8.Nf3 0-0 )


7.Nf3


黒が c7 → c5 から Bg4 で Nf3 をピンすると白は困るため、Bf1 を展開してから Ne2 とする手が好まれていたが、現在は 7.Nf3 が主流の模様。

7.Bc4 c5 8.Ne2 Nc6 9.Be3 0-0


7...c5


先に 0-0 を済ませておきたい気がするが、d4 ポーンを攻撃する。

8.dxc5?! は 8...Bxc3+ 9.Bd2 Bxa1 で黒が Exchange up( B と R の交換で駒の価値的には得 )するが、黒はピース展開で遅れていたり、黒マスに対して弱くなったりで互角の模様。

8.Bb5+ とされると 8...Nc6 9.d5 で困りそうだが  9...a6 とできる( 9...Bxc3+ より良い模様 )


8.Rb1


Bg4 とされる前に b7 ポーンを攻撃し、Bg4 を牽制する。

Rb1 はオープンファイルにあり、h8 → a1 ラインから外れたが、a2 と c3 ポーンに守りがない状態となっている。

8.Be3 Qa5 9.Qd2 0-0 10.Rc1 Rd8


8...0-0


a1 にルークがいなくなり、今度はキャリングをしておく。


9.Be2


消極的な場所のような気がするが、黒の反撃にそなえる。
0-0 可能となる。

白は g2 e4 c3 a2 のポーンが守られてない。

黒9手目はいくつかあり、白は対応を問われる。
9...cxd4  9...Nc6  9...b6  9...Qa5 など


9...cxd4


10.cxd4 に ...Nc6 で d4 にプレッシャーをかけられる。Qa5 でチェックがかかる。

9...Nc6 10.d5 Ne5 11.Nxe5 Bxe5
9...b6 10.0-0 Bb7 11.Qd3 Ba6
9...Qa5 10.0-0 Qxa2 11.Bg5 Qe6


10.cxd4


c ファイル が オープンファイルとなる。

黒はクイーンサイドのパスポーン候補を生かしたい。

10.Nxd4?! Nc6 11.Be3 Qa5 は互角のようだが、12.Qd2?! Rd8 13.Rd1 Be6 は黒が良い感じ( 12.0-0 の方が良い )。


10...Qa5+


11.Qd2 で a2 ポーンを守られると Qa5+ の効果はないように思われるが
11.Qd2 Qxd2 12.Bxd2 e6 となるのは黒にとって悪くないとのこと。
白がまだキャスリングしてない、Rb1 を活用するには Rc1 とする必要がある、など。

11.Bd2 Qxa2 12.0-0 Bg4 13.Be3 Nc6 などと続く( 下図 )



14.Rxb7 でポーンを取られるが、その場合 14.Rab1 Rc2 15.Rfc1 でルーク交換を迫る。

14.d5 が多い模様。いずれにせよ、両者ともにビショップペアが残っており、sharp な状況。黒はクイーンサイドのパスポーンが1つの利点だが、ピースが多く残っており、勝利を得るのは容易ではない。

白はセンターポーンを活用しつつ、駒交換は慎重に行っていきたい。黒のクイーンサイド パスポーンは脅威。

じっくり考える時間があれば面白い局面と言えるだろう。


補足


白3手目 変化について

1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.g3


白が早期にフィアンケットしてくる変化。3...Nc3 と異なる変化になると
黒は始め迷うだろう。

3...c6 から 4...d5 とするのが無難なアプローチ。

3...Bg7 すると 4.Bg2 c6 では 5.e4 とできるため、King's Indian Defence のようになる。

3...d5 は Neo-Grünfeld Defence の名がついているが
3...d5 4.cxd5 Nxd5 5.e4 ということになる。


1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.Nf3


3...d5 とすると 4.cxd5 Nxd5 5.e4 とされる。

3.Nf3 に対してはまず 3...Bg7 として、4.Nc3 や 4.g3 となれば d7 → d5 が1つの選択。

3...Bg7 4.Nc3 d5

3...Bg7 4.g3 0-0 5.Bg2 d5
5...c6 6.0-0 d5
5...d6 は King's Indian Defence となる。


1.d4 Nf6 2.c4 g6 3.f3


白が e2 → e4 としてくることは明白だが、黒としてはどう対処したら良いだろうか?

3...Bg7 4.e4 d6 なら King's Indian Defence の Sämisch Variation となる。

3...c5 とするのは Benoni Defence を得意とするプレイヤーに好まれるらしい。

3...d5 4.cxd5 Nxd5 5.e4 Nb6
黒が悪いわけではないが、Grünfeld Defence のメインラインとは異なってくる。


補足2


Grünfeld Defence に似た感じの局面について


1.d4 d5 2.c4 Nf6?!


Marshall Defence。一見問題なさそうに思えるが


3.cxd5 Nxd5


4.e4 とした時、Grünfeld Defence と違いは何だろう?

定跡的には 4.Nf3! が良いとされている。ただマスターレベルでなければ
2...Nf6?! をとがめるのは容易ではない。



1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6


Queen's Gambit Declined からの局面。黒 e6 ポーンが Bc8 の展開を妨げているため、黒は Bc8 の活用が問題となる。


4.cxd5 exd5


4.cxd5 は QGD のExchange Variation で、Grünfeld Defence の Exchange Variation に似ているが、違いは何か?

e6 ポーンが無くなったことにより、Bc8 が展開できるようになり、黒の都合が良くなったように思えるが、5.Bg5 c6 6.Qc2 Be7 7.e3 Nbd7 8.Bd3。
Ng1 の展開を遅らせる白の指し方がためになる。

白番で QGD を使うなら、Exchange Variation は使ってみたい変化。 


参考文献

Chess Explained: The Grünfeld - Valentin Bogdanov
Grünfeld Defence - Wikipedia
Korchnoi's challenge 1Open Your Eyes!!
Chess openings - Grunfeld
The Grunfeld Defense Chess Openings with GM Damian Lemos
Destroy the Grunfeld Defense - GM Rafael Leitão

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